今回は、Nintendo Switch版の「OCTOPATH TRAVELER II」をプレイした感想と、このゲームの良い点、悪い点をまとめていこう。
(本記事の情報は2023/5/26時点を元にしている)
2D-HDという少し古臭いグラフィックと、使い古されたコマンドRPGという要素を持ちながらも、神ゲーと評されていた前作「オクトパストラベラー」の続編となる本作。
筆者は前作未プレイ勢であったが、前作の評価の高さは聞いており、続編が出るということで非常に気になっていた。発売後少し経ってから本作を購入し、ストーリークリアまでプレイしてみたため、本作の感想などをまとめていきたい。
購入の参考になると幸いだ。
◆個人的感想
総評
昔から良くあるコマンドRPGをベースに、シンプルながらも素晴らしい育成、戦闘システムを重ねることで、ただレベルを上げて、強力な武具を身につけて力押しするだけでない、やりごたえ抜群のゲームへと昇華されている。
また、RPGによくある無駄に広いダンジョンや、テンポの悪いストーリー進行も一切なく、ストーリークリアまで大ボリュームでありながらも、最後まで楽しんで、ノンストップでゲームプレイできた。
パーティメンバーとの交流シーンが薄く、一緒に旅をしている感が薄かったり、レベリング要素に一部不満点があったりしながらも、全体的に非常にクオリティの高い作品に仕上がっているため、多くのRPG好きには是非ともオススメしたい作品だと感じた。
どんな人にオススメ?
- やりごたえのあるコマンドRPGがやりたい
- ボリューム満点のゲームがやりたい
- オムニバス形式のストーリーでも楽しめる
という人にはオススメできる。逆に
- ゲームは3Dの美麗グラフィックであるべき!
- レベリングはあまりしたくないけど、考えてプレイするようなゲームもやだ
というのに当てはまるなら、避けた方が無難だと感じた。
◆このゲームの特徴
既出と新規を組み合わせた新たなコマンドRPG
本作は、敵と味方の行動を交互に繰り返しながら攻撃や回復、支援をして敵の撃破を狙う、いわゆるコマンド型のRPGである。ドラクエシリーズがまさにそうだろう。
素早さが高いキャラから順に行動し、剣や槍などの物理攻撃や、SP(他ゲーで言うところのMP)を消費して魔法攻撃を行い、敵の体力を削る…そんなよく見たバトル展開が主となる。
本作では、そういったコマンドRPGによくある要素に加え、
- ブレイク
- ブースト
- 底力
という、本作特有の要素が存在している。
「ブレイク」は、敵の弱点を突き、敵を無防備状態にすることだ。キャラの持つ攻撃バリエーションには、武器種6つ、魔法属性6つの合計12種類が存在しており、敵は必ずこれらの中のいずれかを弱点として持っている。敵の弱点を突く攻撃を1回当てる毎にシールドを1枚削り、全てのシールドを削り切ればブレイク状態となる。そうなると、敵は1ターン行動できず、更に敵へ与えるダメージが大きくなる。
敵の弱点は遭遇時にはわからず、しらみつぶしに攻撃して確認するか、特定のアビリティで明らかにする必要がある。中には途中で弱点が変わる敵もいる為、臨機応変に攻撃方法を変えていく必要がある。
「ブースト」はBP(ブーストポイント)という専用のポイントを消費し、攻撃回数を増やしたり、与えるダメージを増やしたり、回復効果や支援効果を向上させることができる。
体力ゲージの上に光る点がBP。1回の行動時に最大3つまで使用でき、攻撃回数の増加や技の威力強化ができる
BPは、毎ターン1ずつ回復していくが、使用した次のターンには回復しない。いつにブーストをかけ、どこまで温存するか、使用するタイミングが戦闘の大きなカギとなる。
更に、本作では「底力」という、いわゆる必殺技に当たるものが存在する。「底力」は、
- 敵一体または全体に強烈な一撃を与えられる、攻撃性能が高いもの
- 単体に与える効果が全体向けに拡大されるようになる、支援系の効果が働くもの
- あらゆる攻撃技が、弱点に関わらずシールドを破れるようになるため、敵を一気にブレイク状態に持ち込めるもの
など、キャラ毎に効果が異なっている。どのタイミングで誰の「底力」を使うか、という戦術が、勝利に大きく関わってくる。
ジョブ、アビリティを自由に組み合わせるキャラクター育成
本作の育成要素の大部分は、JRPGらしく、敵を倒して経験値を入手することでのレベル上げや、強力な武器や防具、アクセサリーを入手し、装備することで、どんどんと強くなっていき、更なる強敵撃破を目指すものになっている。
本作では、このような王道の育成要素以外にも、ジョブの習得と、ジョブごとのアビリティを組み合わせてることで強化する仕組みも存在する。
各キャラには、ベースとなるジョブ1つと、追加で設定できるバトルジョブ1つの、合計2つのジョブを設定できる。ジョブごとに強化される基本パラメータや、入手できるアビリティが異なっている。
アビリティには、戦闘時にSPを消費して使用する、いわゆる「特技/術技」に当たるものと、最大4つまでセットでき、セットするだけで常に効果を発揮するサポートアビリティが存在する。
サポートアビリティには、
- 体力やSPの最大値を増加させる
- 物理攻撃力、回避力などを増加させる
- レアな敵に出会いやすくなる
- 夜の間の戦闘で手に入る経験値やお金が増加する
など、バリエーションに富んだ様々なものが用意されている。状況に合わせて必要なサポートアビリティを付け替え、物語を有利に進めていくことになる。
キャラ毎に異なるアクションが可能な「フィールドコマンド」
街中やフィールドに存在するNPCには、フィールドコマンドというアクションを仕掛けられる。これにより、プレイヤーの冒険に役立つ様々な追加情報、追加アイテム、戦闘で手を貸してくれる仲間を手に入れられる。
フィールドアクションは大きく、
- NPCを味方にする勧誘型
- NPCからアイテムを入手する搾取型
- NPCを気絶させて、通行止め状態を解除する排除型
- 相手から情報を集めてくる探偵型
に分けられる。フィールドコマンドはキャラ一体につき、昼用1つ、夜用1つの合計2つ持っているため、登場キャラの8人全員を仲間にすれば、16ものフィールドコマンドが使用できる。
更に、同じ型の中でも、キャラによっては条件達成方法が異なる。例えば、アイテムを入手する搾取型でも、「パルテティオ」は規定の金額を払ってNPCから購入できるが、「アグネア」は規定レベルに到達していれば、ノーコストでアイテムをもらえるし、「オズワルド」はレベルに関わらず、NPCと1対1の戦闘をして勝利すればすべてのアイテムを入手できる。
フィールドの昼夜は、プレイヤーの手でいつでも自由に切り換え可能。街中を昼中に一通り探索した後に、夜に変更してまた探索したり、切り替えてすぐにフィールドアクションを使用したりと、状況に応じて細かく切り替えて進めることができる。
目的、生まれ、特技…様々な境遇の8人のキャラが織りなす物語
本作の舞台は、西大陸と東大陸の2大陸が連なる世界である「ソリスティア大陸」。ここには、境遇の異なる8人のキャラが登場する。ゲーム開始時は、8人の中から1人を選び、その主人公を中心に、最大8人パーティとなるよう、仲間を集め、目的を達成する冒険が繰り広げられる。
登場するキャラたちは、
- クーデターで国を追い出された王子が、自国を取り戻そうと足掻く「ヒカリ」
- 無実の罪で収容された監獄から脱獄し、自分に罪を着せた男への復讐を果そうとする「オズバルド」
- 小さな田舎町から、世界的知名度を持った踊り子になろうと旅を続ける「アグネア」
など、それぞれのキャラが抱える境遇は異なる。
また、本作では各キャラの物語以外にも、複数のキャラ同士で交流しながら展開する「クロスストーリー」が用意されている。キャラ毎の旅の目的とは異なるものの、キャラクター同士の交流を描いた個別の物語が展開される。
なお、前作「オクトパストラベラー」とのストーリー繋がりは一切ないため、前作をやる必要は一切ない。
◆このゲームの良い点
育成システムとコマンドRPGとの噛み合いが絶妙!
ありきたりなコマンドRPGに見える本作だが、他と比べ、ボス戦の難易度は少々高め。ただ、高めな難易度でもしっかり楽しく、且つ考えれば勝利可能な戦闘、育成システムが作り込まれており、非常に楽しかった。
一番奥深さを感じたのは、BPとブレイクの存在だった。ボスなどの強力な敵ほど、1回の攻撃でこちらが受けるダメージやデバフ影響が大きく、ブレイクに必要な攻撃数も増える。その為、さっさと敵をブレイク状態にし、行動数を制限した上で大ダメージを叩き込むのが鉄則になる。
だが、素早くシールドを削ろうにも、通常の方法では1回の攻撃で削れるシールドの枚数は限られる。そこでBPを消費して攻撃回数を2回、3回、4回と増やすことで、素早く大量にシールドを削ることができる。
ただし、ブレイク用にBPを使いすぎると、今度はブレイク中に使用できるBP数が無くなり、大ダメージを与えるチャンスを逃してしまう。
その為、無闇にBP消費してブレイクを狙うのではなく、
- 行動順を見ると、敵のターンまで後5ターンはこっちが攻撃できるな
- ならここはBPを消費せずとも、通常攻撃と攻撃回数の多い特技を使えばシールドを削りきれるな
- 敵がブレイク状態になった後に、全員でBP3つを消費して大ダメージを叩き込もう!
という、BPの計画、管理が必要になるのだ。
そもそも敵の弱点を突ける攻撃手段を持ってなかったり、敵の攻撃にも柔軟に対応できる特技を持ったジョブ構成にしないと、ブレイクを狙う前に負けてしまう。
そこで大事になるのがJOB構成だ。同じパーティでも、ジョブやアビリティの組み合わせを変えて、回復や魔法攻撃のできる要員数を増やしたり、物理防御力を底上げできるジョブを装備して耐え切ったり、ということをすれば、敵の戦術にも柔軟に対応できる。一度負けたボス相手でも、ジョブやサポートアビリティの組み合わせを変えるだけで、そこまで苦戦せず勝てることもある程、これらの組み合わせは大切だ。
敵の弱点を狙う攻撃導線の考案、適材適所のBP管理、最適なジョブ構成検討など、ここまで考えて、かつ色々試すようなコマンドRPGはプレイしたことがなく、非常に楽しかった。
「そんなこと言われると難しそう…」という人でも、キャラのレベルを沢山上げて力押しする方法を取ることも可能なので、そこまで心配せずとも楽しめるはずだ。
超ボリュームのストーリーは非常に作り込まれていて惹き込まれる!
8人のキャラのストーリーは、目的の街へ到着し、そこで起こるトラブルを解決しながら、自身の目的を達成してまた次の目的地へ移動する、という展開は変わらない。
だが、それらの描く細かなストーリー描写が非常に良くできている。
- 『復讐や奪還』を目的にした「ヒカリ」や「オズワルド」
- 『真実の探求』を目的にした「キャスティ」や「テメノス」
- 『夢の実現』を目的にした「アグネア」や「パルテティオ」
- 『自身の解放』を目的にした「ソローネ」
- 『仲間の守護』を目的にした「オーシュット」
など、全体的に「復讐/反逆/解放」といった、少し暗めの、大人向けで非常に練られたストーリーが展開されていた。
筆者が好きだったのは、「キャスティ」と「テメノス」のストーリーだ。キャラ自身だけでなく、プレイヤー自身も真実が分からない状態から始めていき、少しずつ真相がわかっていく、という謎解きに近いストーリーには、非常に惹き込まれた。
ゲームをやって中盤までは、「8人のキャラのストーリーが個別展開されるだけで終わりなのかな?」と思っていたが、終盤にさしかかると、実は各キャラの物語にはとある関わりがあることが分かってくる。その繋ぎ方も実に見事だ。
8人分ものキャラのストーリーを追うため、ストーリークリアだけで約60時間の超ボリュームだったが、それでも中だるみすることなく、最後まで飽きの来ない楽しいストーリーが展開されていた点は良かった。
ダンジョンがコンパクトで遊びやすい!
RPGあるあるだが、入ったダンジョンが非常に広い上、作品によっては途中で謎解きが発生したりなど、ストーリーを進めたいのにダンジョン攻略に時間がかかり、かったるくなることが良くある。筆者もこれが嫌で、特にコマンドRPGと言われる類のゲームは、そこまで好きになれなかった。
が、本作はダンジョンのサイズが全体的にかなり小さく、謎解きも無く、非常にスッキリしている。その為、ストーリーがポンポン進むし、次々に新しいダンジョンに入って、ボス戦をいくつもこなせる、といった印象が強い。それでいて、雑魚戦1回で手に入る経験値の量も比較的あるため、『悪い点に書いた特定の理由を除き』、レベル上げを意図してやる必要がある場面も少なかった。
RPGにありがちな「中だるみしやすい大規模なダンジョン構成」というのがなく、テンポ感持ってゲームを進められるため、非常に心地よかった。
クリア後もやり込める要素がしっかり存在!
メインストーリーのクリアだけでも大ボリュームである本作だが、やり込み要素もしっかり用意されている。
一つはサイドクエストだ。街の中には、特定のアイテムや人物を連れて来て欲しい、という依頼や、特定の魔物を討伐して来て欲しい、といった依頼事項を持っているNPCがいる。そのNPCの依頼を達成すると、育成に役立つアイテムやお金を入手できるため、攻略が更に楽になる。サイドクエストの数はかなりの数が用意されており、やりごたえ抜群だ。
もう一つは隠しダンジョンだ。世界各地には、メインストーリーでは訪れることのない隠しダンジョンが存在している。サイドダンジョンの奥には、通常は入手できないレアなアイテムや、サイドクエストの攻略に必要な人物と遭遇できたりする。ダンジョンの中には、メインストーリーのボスよりも強力なボスが待ち構えていることもあるため、しっかりとした準備をした上で勝負を挑む必要があった。
ここまでボリュームがあると、全部やり込もうと思えば、このゲームだけで100時間近くは遊べるのではないか。
2D-HDの映像は非常に綺麗!
昨今は3D表記によるリアル表現がメインであるゲームの中で、2D-HDという10年以上も前のゲームに出てくるような表現は、ちょっと時代遅れ感を感じてしまうだろう。
だが、実際にプレイしてみると、そんな時代遅れ感は微塵もないことがわかる。プレイしてすぐに、2Dであることの違和感はなくなるほどだ。
- 丁寧に奥行きが描かれた街並み
- ライトの照らし方による、賑やかさや静けさ、不気味さの書き分け
- 戦闘シーンでの迫力のあるエフェクト
など、3Dゲームにも引けを取らない、非常に綺麗なグラフィックで作られている。無料の体験版も配信されているため、「今時2Dのゲームなんて…」と毛嫌いせず、体験版に触れてみて、この美しさを味わってみてほしい。
フルボイスに、魅力的な音楽!音を出しながらプレイしたい!
本作は、サイドクエストおよび道中で発生するキャラ毎の会話以外、あらゆる場面がフルボイスで作られている。戦闘時に使用する技名や、ピンチの時に発する声、戦闘勝利時等の場面でも、それぞれ個別のセリフがしっかり用意されている。
登場する声優陣は皆、声優に詳しくない筆者でも知っているほどの有名声優ばかり。彼らの演技力もあって、1本のアニメを見ているかのような感覚で楽しむことができた。セリフ進行がオート進行で進んでくれるのも、プレイヤー向けに親切に作られていてありがたかった。
フルボイスの会話や戦闘シーンだけでなく、BGMも非常に魅力的。雪が降る町ではシンシンとした音楽が、光が差し込む森林の中ではあたたかな音楽が、ボス戦では鬼気迫る音楽が、その場面に応じた最適な音楽がフルオーケストラで描かれることで、物語への没入感を更に引き込んでくれる。
無音で本作をプレイするのは本当に勿体ない。是非とも音を出して楽しんでみてほしい。
◆このゲームの悪い点
ちょくちょく入るロードが若干気になる…
筆者がプレイしたNintendo Switch版では、マップの切り替えやストーリーの場面転換等の各場面で、約5秒ちょっとのロードが入る。
そこまで長いロード時間でもないし、頻度が多い訳でもないため、気にならない人もいるだろうが、ずっとプレイしていると少しずつではあるが気になってしまった。
PS版などではロードがほぼ無い、というコメントを見たことがあるため、ロードを一才挟みたく無い人は、PS版を買うのをおすすめする。
8人で一緒に旅している感が薄い…
本作は、最初に決めた主人公の旅に同伴する形で、道中で最大7人の味方が合流する。各キャラのストーリーは完全に独立しており、それぞれ自分の目的だけを達成するようにストーリーが展開される。
各キャラのストーリー内に、一緒に冒険する他キャラが登場するのかというと、そんなことは一切無い。まるで「そのキャラ1人でしか旅をしていない」ような描かれ方をしてるため、他RPGにあるような、仲間を集め、皆で力を合わせて困難を突破していく、といったような描写は、ゲーム終盤までは描かれない。
一応、メンバー同士のクロスストーリーや、メンバーとチャット上でやり取りするような場面はあるものの、これも物語全体の一部でしかない。
完全なオムニバス形式の作品であれば、この形でもアリなのだが、そういう作品でもないので、ちょっとどっちつかずな印象を感じてしまった。
キャラのレベリング要素がちょっと不親切…
本作では、8人の仲間のうち、4人までしか同伴することができない。残りの4人は酒場に待機してもらうことになるが、酒場で待機中のキャラには経験値が一切入らない。
しかし、ストーリーを進めるには、そのストーリーのメインキャラがパーティー内にいる必要があり、そのキャラが酒場でずっと待機してようものなら、キャラのストーリーを進めるためにいちいちレベル上げをして、また別のキャラに切り替えてレベル上げして…といった行動が必要になってくる。
8人のキャラ全員が一定のレベルに到達していないと、ストーリー進行が難しくなるのであれば、酒場に預けているキャラにも何かしらの形で経験値が入るようにしてほしいと感じた。
◆まとめ
実際遊んでみると、神ゲーとの評価に負けていないことがわかる、非常に面白い作品だった「OCTOPATH TRAVELER II」。
昨今発売されるようなゲームに逆行するようなコンセプトで作られているにも関わらず、製作陣によってしっかり練られて、作り込まれた作品であるならば、ここまでいい作品が出来上がるのだな…と感心してしまうほどだった。
「なんか時代遅れっぽいゲームに見えるからなぁ…」と避けるのでは無く、ぜひプレイしてみて、この出来を味わってほしい!
では!