今回は、Nintendo Switch版の「THE LEGEND OF LEGACY HD REMASTERD」について、このゲームの特徴や良い点、悪い点をまとめていきたい。
(本記事は2024/3/15時点の情報をもとにしている)
元は3DSで発売されていた作品を、映像を綺麗にして作り直して2024/2月に発売したリマスター作品である本作。戦闘が重要視されるゲーム、ということで、戦闘が好きな筆者も気になってプレイ!クリアまでプレイしてみたため、本作がどんな作品なのか、感想をまとめていきたい。
なお、筆者は3DSの原作はプレイしていないため、その前提で読んでいただきたい。
◆個人的感想
総評
ゲーム単体で見ると凡ゲーだが、メーカー小売希望価格6000円強という比較的強気な価格作品として見ると、若干クソゲー寄りな気もしてならない。
ゲームシステム面を中心にかなり不親切な面が目立つ上、育成バランスも大味なため、
- こういう育成をしてみたい
- こんなキャラをパーティに入れて冒険してみたい
という気になれなかった。
自分で武器やスキル、フォーメーションの組み合わせを考え、強敵を撃破する事ができれば達成感を感じられて楽しめるものの、運ゲー頼りになる部分があったり、運ゲー要素を減らすためには特定の戦い方をした方が効果的だったりと、大雑把な戦闘バランスで、「楽しいか」というと首を縦には振れない。
ニッチな層にはハマりそうな気がするが、その間口もかなり狭い印象で、「オススメできるか?」と聞かれたらまずオススメしない。購入するのであればセールを待つか、ちゃんと本作の特徴を理解しきった上で購入するように心がけてほしい。
どんな人にオススメ?
- 歯応えのあるコマンドPRGがやりたい
- 戦闘メインでストーリーはいらない
という人にはオススメできる。逆に、
- ゲーム中にチュートリアルが欲しい
- バランスよく成長していきたい
- グラフィックが綺麗で音声込みのゲームがやりたい
- 周回プレイ要素が充実してほしい
という人にはおすすめはできない。
◆このゲームの特徴
シンボルエンカウント方式のコマンドRPG
本作は、拠点となる街とダンジョンとを往復し、探索を進めて新たなエリアを開放することを繰り返すRPGだ。
森林、沼地、遺跡等、様々な特徴のあるマップを探索し、更なるマップの解放や、必要アイテムの獲得を行っていく。マップ内にはモンスターが徘徊しており、プレイヤーに接触するとバトルに突入するシンボルエンカウント方式をとっている。敵はこちらを見つけるとかなりの速度で追いかけてくるため、戦いたくないなら全力で逃げる必要がある。
本作のバトルシステムは、RPGにはよくあるターン制コマンドバトルを採用。通常攻撃、戦技、精霊術(いわゆる魔法)といったコマンドの中から、キャラ毎に行いたい内容を選択し、敵味方合わせて素早さが早い順に行動が行われていく。敵の殲滅をすれば勝利、ステータス増加や、戦利品の獲得が行える。
「勝てない」と判断した場合は、ボス戦を除きいつでも逃走できるが、その時はマップの入り口まで戻ってしまう。キャラの育成が足りず、「このまま探索を続けるのは危ない」と判断したなら、早めにマップ探索を諦めることが大切となる。
フォーメーションを考え、精霊との契約を結びながら戦うシステム
基本的にはよくあるコマンド型の戦闘システムだが、他ゲーに無い、本作ならではの特徴が2つある。
一つは「フォーメーションの存在」だ。フォーメーションとは、
- 防御性能が上がる「GUARD」
- 武器や精霊術での攻撃性能が上がる「ATTACK」
- 素早い行動ができる「SUPPORT」
という3種類のポジションに対して、各キャラをどこにはめ込むのか、事前に定義しておくことである。
各ターンの開始時に、プレイヤーは自分が事前に考えた複数のフォーメーションの中から、このターンで使いたいフォーメーションを選択する。その後、各キャラ毎に取りたいコマンドを選択していく。
同じATTACK系のポジションの中でも、素早さを落とす代わりに火力上げたスタイルや、火力と素早さの両方を少し上げるスタイルなど、様々な特徴がある。どのスタイルを誰にあてはめるのか、を考えながらフォーメーションを決めていくことになる。
もう一つは、「精霊との契約」だ。精霊術を使うには、その精霊術の属性に合致した精霊と契約しなくてはいけない。精霊と契約するには、「歌う岩のかけら」という専用アイテムを装備し、「大いなる呼びかけ」というコマンドを使う。
精霊との契約は、精霊術の使用以外にも、戦闘に参加している敵味方の火力や特殊効果にも影響を与える。水の精霊であれば、精霊術で受ける効果を半減&ターン終了時のHP自動回復効果、炎の精霊であれば戦技で与えるダメージ2倍&状態異常付与確率の増加が付加されるなど、様々な補助効果が得られる。火力の変動は敵味方問わず同じ効果が適用される。
地図を入手し、探索し、新たな目的地を見つける探索的ゲーム
本作では、拠点となる「インティウム」と、初期から行けるマップ以外は、ゲームを進めるだけで次の目的地は出てこない。「地図」というアイテムを見つける必要がある。
地図は、冒険中に新たなエリアへの入り口を発見するか、「インティウム」にいる商人から購入することで手に入る。これを繰り返しながら、ステージの先へと進行する。
始めて訪れるマップは、地図上に何も描かれておらず、全くの白紙だ。キャラの移動に合わせて、歩いた個所が地図に書き込まれていき、100%分書き込めば、そのエリアの全容が解明される。
地図は街の商人へ売ることが可能。地図の塗り潰し度合いにより、売却価格が変わる。地図を売却したマップは、休息ポイントを設けてくれるNPCが登場したり、マップ内のモンスター数が減ったりと、ダンジョン探索を有利に進められるようになる。
マップの各地には、不思議な石板が配置されていることがある。「歌う岩のかけら」を手に入れた状態でアクセスすると、石板が光り、その周囲での戦闘時は、石板の色に該当する精霊との契約が事前に施された状態で戦闘が始まる。
また、この石板は、エリア内の何かのイベントと連動していることがある。起動することで、道を塞いでいる瓦礫が消えたり、ワープ装置が起動したり、といったことができる。
ランダムでステータス強化される育成要素
本作の育成は、他ゲームでは見ない、非常に独特な作りをしている。
経験値という概念がなく、敵をいくら倒しても、レベルアップしてステータスが向上することはない。その代わり、各キャラは
- GUARD
- ATTACK
- SAPORT
という3つのステータスを持ち、自分が配属されているフォーメーションに該当したステータスが、戦闘終了時にランダムでレベルアップする。これ以外にも、HPやSPの上限値もランダムで増加する。敵との強さの差が開いているほど、強化が発生する確率が上がる。
キャラが使う戦技にも、同じく「GUARD」「ATTACK」「SUPPORT」というステータスが別に用意されている。これは該当するフォーメーションに配置されている状態で戦技を使った時に火力に乗っかる補正値を表している。こちらは戦闘中に戦技を使ったタイミングでランダムでレベルアップする。
戦技を用いた攻撃や、精霊術を使用する際に、派生した別戦技を習得できる「覚醒」が発動することがある。新たな戦技を覚える際は、全てこの「覚醒」を経由して手に入れることとなる。
いつ覚醒するか、何が覚醒するか、はランダムであり、こちらの意思では決められない。敵が強いほど、覚醒が発生する確率は上がっていく。
宝箱、商人、交易等で装備を入手し、装備する強化システム
本作では、キャラ毎に武器2つと防具4つ、アクセサリ2つを装備できる。
武器や防具は、マップ探索中に見つけた宝箱や、商人からの購入、敵を倒して入手、といった他ゲームによくあるシステムに加え、「交易」で入手することもできる。
「交易」は、外海の治屋都市に向けて船を派遣し、一定時間後に様々なアイテムを持ち帰ってくれるシステムだ。「ガレー」「キャラベル」「ガレオン」という大中小3種類の船の中からひとつを選択し、価格が高い交易船程、持ち替える装備品の質も良い。交易でしか手に入らない武具もある。
幻の大陸を探索し、遺産を見つける物語
本作の舞台「アヴァロン」は、かつて神々が暮らした豊かな国と言われていた。それが、物語開始の10年前、と駆除として海上に現れたのだ。「アヴァロン」にあると言われる伝説の存在「星杯」を求め、数多くの人々がこの島に訪れたが、島に巣くうモンスター達の妨害により、ここ10年余りは調査が難航していた。
「アヴァロン」の南端に位置する、この島の唯一の街「インティウム」は、最初にこの島を発見した自称「冒険王」が、10年かけて築き上げた街。ここには探索の拠点として日々多くの冒険者が訪れている。
主人公も、様々な思いを胸に、この「インティウム」を訪れる。果たして伝説の「星杯」を見つけることができるのか。冒険物語が幕を開ける。
本作には7人の主人公が存在し、ゲーム序盤にはどのキャラを主人公に添えて遊ぶか選択することとなる。キャラ毎に冒険の目的は若干異なるが、たどるストーリーはおおむね同じものとなる。
◆このゲームの良い点
「フォーメーション」を活かした戦闘システムは面白い!
本作は、基本的には超絶オーソドックスなコマンドRPGだ。しかし、フォーメーションにより、同じキャラでも火力や防御力があがったり、追加効果が発生したりするため、状況に応じたフォーメーションへ切り替えることで、対処のし易さが大きく変わるのは面白かった。
例えば、火力の高い技を持つ敵を相手にした場合、一刻も早く防御力を上げるバフをかけるべく、精霊との契約や精霊術の発動をする必要がある。そのため、「歌う岩のかけら」を持ったキャラと、バフ系精霊術を持ったキャラを「SUPPORT」ポジションにあて、盾を持ったキャラを「GUARD」ポジションにあてて防御させれば、素早いバフ構築と、それまでの壁役の両方を作ることができる。準備が整ったら、今度は全員を「ATTACK」ポジションにしたフォーメーションを選んで、火力を上げて一気に倒す事も可能だ。
バフをあてても耐えきれない程の火力を持つ敵なら、思い切って全員を「GUARD」ポジションにし、防御重視の戦いをして凌ぎきる手もある。
どの案を取るも正解で、自分なりな戦い方の創意工夫ができるのは楽しかった。
ロードは早め、バグも無しでストレスは少ない!
筆者はNintendo Switchで本作をプレイしたが、マップ間の移動でもロードというロードはほとんどなく、快適にプレイできた。Switchのマシンスペックでは、どうしてもロードが切っても切り離せないことが多い作品が多い中で、本作のレスポンスの良さはかなり良かった部類だと感じた。
また、ゲームクリアまで一通り遊んでも、バグというバグには一切遭遇しなかった。高品質という面でもストレス無く楽しめた点は良かった。
武器や敵、戦技などの収集要素が多い!
本作には、「アヴァロンの書」と呼ばれる図鑑が用意されている。倒した敵や手に入れた武器、解放した精霊術などを全て記録したもので、これを全て埋めようと頑張るなら、結構なボリュームがあった。
筆者は1周目のクリアにおおよそ25時間かかったが、図鑑の約4割ほどしか当たらなかったため、まだ見ぬ敵やアイテムがあるのには驚いた、
敵の中には、マップの奥地にいたり、ランダムに現れたり、メインストーリー上攻略必須ではないエリアにいたりする裏ボス的なキャラも複数いる。それを倒すことでようやく「アヴァロンの書」が埋まるため、その攻略を全てやりきるのも、ボリュームがあって良いと思った。
◆このゲームの悪い点
戦闘バランスや育成システムはかなり大味…
本作の硬派なゲームバランスは、いい点もある反面、悪い点も結構目立つ。
雑魚敵は全員、複数の攻撃パターンを持っている。その中の特定の攻撃だけ、異常なまでに火力が高い。比較的育成した状態でも、その攻撃を連打されたら、なす術もなくやられてしまうことがある。一応、自陣にバフを敷けばなんとかなるが、それに至るまでにやられてしまったり、バフ効果が途切れた瞬間に該当の攻撃を叩き込まれたら結局どうしようもない。
また、そのターンの攻撃を一切できなくする「スタン」属性を与える攻撃を持つ敵が多く、そういった敵に限って素早さが早いため、敵が先に動いてスタンして何もできない、ということを繰り返す事となったのはかなりイライラした。こちらの「SUPPORT」ステータスを上げれば素早さを早くして速度を追い越すことができるが、そこまで育成するのにも時間がかかるため、新マップに足を踏み入れるたびにキツかった。
「ランダムでステータスが向上する」という成長システムも、個人的には微妙な印象だ。
- 戦技や精霊術の覚醒もランダム
- キャラのHP、SP、ATTACK、GUARD、SUPPORTのステータスアップもランダム
- 戦技や精霊術毎のATTACK、GUARD、SUPPORTのステータスアップもランダム
と、ステータスや戦技獲得を示す項目数があまりに多く、そのどれもがランダムレベルアップとなっており、育成に必要な要素数が多過ぎる。これのせいで、「今のマップの敵が強いから、前のマップに戻ってレベル上げしよう」と思っても、いつになったら次のマップで十分戦えるほどのステータスに育つのかわからないため、計画的な育成なんてできなかった。
ストーリーを進めていく中で、他キャラを仲間に加えられる機会があるが、上記の育成のやり直し&どれ位で育成が追いつくか見えないため、仲間になった他キャラを連れ込む気にすらなれなかった。
本作は周回要素が用意されており、周回戦用にイベントがあるらしいが、このランダムレベルアップのせいで、何回も周回する気にはなれなかった。
精霊術周りの使い勝手が総じて悪い…
本作の魔法に当たる精霊術だが、その使い勝手が悪いのが気になった。
精霊術を使うには、その戦闘内で「歌う岩のかけら」を使用し、精霊とを契約する必要がある。この「歌う岩のかけら」は、装備品という扱いになっており、キャラの装備画面で、2つしかない貴重なアクセサリ欄を消費して持たないといけない。ゲームシステム的に、「歌う岩のかけら」を装備して使用しないとクリアが難しい仕組みとなっているため、装備しないという選択肢は発生しない。ここまで必須道具になるなら、アクセサリ欄とは別のジャンルとするか、装備せずともキャラの誰かが任意で使用できる共有アイテム欄みたいなところに配置するべきだ、と感じた。
精霊術そのものも、序盤は使えるものの、中盤以降は特定の精霊術を除き、大多数は使う機会がなかった。時間をかけて精霊と契約し、精霊術を使うより、即効性のある通常武器での攻撃の方が威力が高く、効果的なのだ。
精霊術を使うには、特定条件を除いて「ささやく岩の欠片」を装備しないと使えず、これまたアクセサリ欄を消費するため、他にも用意されている装備品が結局使用できない場面が多かったのも欠点だった。
説明不足が多く、システム理解がしにくい…
本作はゲームシステムへの説明不足があまりにも多い。ここまで不親切なゲームは逆に珍しい。
一応、ゲーム内の好きなタイミングで、ステータスの意味や精霊毎の効果、戦闘システムなどについてのチュートリアルを見ることはできるが、それを確認しなくてもわかるように事前説明はすべきだ、と感じた。
また、中にはチュートリアルを読んでもイマイチわからないシステムも多い。筆者は最初、キャラのステータスと戦技のステータスそれぞれに「GUARD」や「ATTACK」が存在していることの意味が分からなかった。ひと昔前の公式生放送のアーカイブや、攻略サイトを読みまくって、やっとそれぞれの意味を理解できたほどだ。また、キャラの中には隠しスキルを持っているキャラがいたり、キャラ毎に得意とする武器、苦手とする武器等の要素が存在するが、それもチュートリアルには書いておらず、攻略サイトを見ないと気付けない。
システムを理解するまでは本当に大変だったため、流石にもう少し、説明描写は付けるべきだ、と感じた。
周回を推しているのに周回要素が薄い…
本作はクリア後のデータをロードして周回プレイすることで、新アートが手に入ったり、遭遇しにくかったレアモンスターに出会える確率が上がったりする。また、主人公が7人いるため、クリアを繰り返して全主人公のストーリーを見ていく要素もある。
そのような周回前提のシステムにも関わらず、周回要素がかなり薄い。周回時に引き継がれるのは、
- お金
- フォーメーション
- アヴァロンの書のデータ
- 特定の最上級武器
しかない。武器については、引き継ぎというより、ゲーム開始直後から商人より購入できるのみで、そもそもお金が満足に手に入らないと購入自体できない。
周回することで新たなエリアが開放されるとか、新たな物語が展開されるとか、そういうことも無いので、周回する旨みがない。周回を推しているにも関わらず、この周回要素の薄さは流石に残念だった。
グラフィック悪い、ムービー無し、ほぼボイス無し…
グラフィックは昨今のゲームと比べてもかなり劣っている。ひと昔前のポリゴン調のキャラグラフィックを、ジャギジャギ感が出ないよう丁寧にレンダリングしなおした感じたった。
また、本作にはムービーらしいムービーが一切ない。それらしい描写の時も、キャラの立ち位置が動く位で、PS2やゲームキューブに出てた作品のムービーの方がまだ質がいい。流石にもっとやりようがあっただろう…
ボイス面でも、時折流れるナレーター以外に、本作にはキャラボイスが一切出てこない。無料のスマホゲームですらボイスがついてることが多いのに、殆どボイス無しは流石に驚いた。
この状態で小売希望価格6000円超え、というのは、価格設定として納得はいかなかった。
ストーリーはあってないようなもの…
主人公ごとに冒険する目的が異なっている、という違いはあるものの、クリアしていくマップやクリア順、そこで起きるイベント等は全て同じで違いはない。せっかく複数主人公を用意しているのに、それがほとんど活かせていないのは残念だ。
主人公共通して遊ぶことになるストーリー自体も面白くない。探索を繰り返し、次々に見たことないエリアが見つかったり、不思議な出来事が起こったりするのをただ経験するのみで、人間同士のごたごたや、心温まるエピソードが生じるわけではない。ラスボスのもとにも、冒険するうちに何となく到着したような描き方をされるし、何故かラスボスから襲われ、それを撃退して終わり、という妙にあっけない作りになっているため、ストーリー性はほぼ無いといえた。
完全に戦闘要素に振り切ったような作品であり、ストーリー性を期待して遊ぶのはお角違いと言えた。
◆まとめ
独自路線のRPGを貫きながらも、ゲームの根幹の面白さがそこまで感じられず、あまり楽しめなかった「THE LEGEND OF LEGACY HD REMASTERD」。
安価なゲームであれば妥当な作品となったと思うが、そのまま買うのは値段と内容があっておらず、あまりオススメできない。
「気になっている」レベルなのであれば、セールを待つなり、中古で買うなりした方が効果的だ。
では!