今回は、「FREDERICA」をプレイした感想と、このゲームの良い点、悪い点をまとめていこう。
(2023/11/19時点の情報である)
2023/9/28にSwitch向けに密かに発売された「FREDERICA」。 この作品の存在を知らない人も多いのではないか。筆者も、ニンテンドーeショップを散策して初めて気付いた程だ。
気になったため購入してプレイ!ストーリークリア、および裏ボスまで突破した上で、本作のレビューをしてみたいと思う。
◆個人的感想
総評
フルプライスではない、比較的安価なゲームにしては、システム面、ストーリー面、含めよくまとまっている。不満点も色々ありはするが、値段から見ても「それくらいならいいか」と許容する気持ちになれるほど。
可愛い見た目とは裏腹にアクション面がしっかりしており、結構難易度が高い点も、アクションゲームが好きな筆者としてはささった。
全体通して「普通ゲーから良ゲー」くらいの作りな印象。やりごたえがあり、長く遊べるアクションゲームを求めている人であればオススメできるため、内容を理解した上であれば、買うのをオススメしたい作品だと感じた。
どんな人にオススメ?
- やりごたえのあるアクションゲームがやりたい!
- あまりごちゃついておらず、シンプルなゲームがやりたい!
- 安くてもボリュームのあるゲームがやりたい!
- 装備厳選が好き!
- 一人プレイのゲームがやりたい!
という人にはオススメできる。逆に
- アクションゲームをやったことがほぼ無い…
- 濃厚ストーリーを体験したい!
- ほのぼの育成系ゲームがやりたい!
- 超本格ハクスラゲームをやりたい!
- オンラインマルチプレイゲームがやりたい!
という人は、避けた方がいいだろう。
◆このゲームの特徴
見下ろし方のハクスラアクションゲーム
本作は、ハクスラ要素を取り入れた見下ろし方のオフライン専用アクションゲームである。
ハクスラとは「ハック&スラッシュ」の略称。武器や防具などの装備品にランダムな性能が付いており、これらを組み合わせて自身が理想とするステータス構築(通称ビルド)を行い、より難易度の高いダンジョンへと挑んでいくことを繰り返すゲームのことだ。
四方八方から襲ってくる大量の敵を、攻撃や回避、様々なスキルを駆使して倒していき、ダンジョンの奥深くへと進んでいく事を繰り返すシステムだ。
本作では、様々な生産施設が用意されている「拠点」と、幾層にも渡り、内部構造も大きい「大穴」というダンジョンを行き来することがメインとなる。拠点で装備品や料理を生産してステータス向上を図り、大穴に挑んで敵を撃破しながらアイテムを集め、また拠点に戻ってより強い装備を作って…という事を繰り返し、より大穴の先を目指していく。
大穴の奥に挑むほどに、敵は強く、数も多く、危険なトラップも蔓延るようになり、気が抜けない戦いが続いていく。敵に倒されると、その探索中に入手したアイテムの一部を失ってしまうため、ダンジョンを先に進めていくよう頑張るか、安全を考慮して一時撤退するか、といった選択を行うことになる。
また、大穴に広がるダンジョンは、入る度に多少ではあるが構造が変わる「半ローグライク」的な形式をとっている。常に探索が求められるため、ハクスラという、何度も同じダンジョンに挑んでいくタイプのゲームとの相性が良い。
特徴の異なる7人の戦士を切り替えながらの戦闘
本作では、ゲーム開始時から、アーチャーやローグ、ファイターなど、戦い方もステータスも大きく異なる7体の戦士を使用できる。
各キャラはそれぞれ固有の「クラス」を持っており、ゲームを進めていくことで、最大3つのクラスの中から、自分が使いたいクラスを選ぶ。「クラス」毎に使用できるスキルが異なっており、プレイヤーは解放している「クラス」の中から最大3つまでスキルをセッティングし、使用できる。「クラス」が解放されると、キャラが使用できるスキルの種類も増える。
スキルには、一定時間ステータスを増加させるものや、遠距離攻撃を放つもの、周囲を攻撃してダメージを与えるもの等、数多くの種類が存在している。どれも強力であるため、一度使用すると、一定時間のクールタイムが必要となる。
敵を倒したり、各エリアで提示された特殊条件を達成したりすれば経験値を入手可能。一定数集めればレベルアップし、体力が増えたり、新たなスキルを獲得するためのポイントを手に入れられる。このポイントを自由に振り分けることで新たなスキルの獲得や、獲得済みスキルの性能強化を行える。
大穴では、7人のうち1人のキャラしか操作することができない。操作キャラの体力が切れ、回復薬も使い果たした状態では、それ以上ダンジョンを探索するのは危険だ。そういう時は、マップ中に点在している「結晶」に触れることで、待機している他キャラへと操作キャラを切り替えることができる。もちろん、一度切り替えた後に、別の「結晶」に立ち寄り、また元々使用してキャラに操作を戻すことも可能だ。
素材生産と武具作成、料理等のクラフト要素
拠点では、様々なアイテムのクラフトを行うことができる。大穴をより深くまで探索するためには非常に大切な要素だ。
大穴の中で集めてきた鉱石、木材、食物の種などを使用し、拠点内の専用設備で、金属や木材、食材などの素材を作ることができる。設備の中でも一度に作成できる数には限度があるが、何度も繰り返し生産を行うことで施設レベルが上がり、生産ロット数が増していく。
ここで生産した素材は、武具や料理の生産に使用する。
武具は、大穴を探索して手に入れる「面影(おもかげ)」(いわゆる設計図)と、必要な各種素材やルーン(いわゆるお金)を揃えることで作成可能。強力な武具であるほど、作成時に必要となる素材の数や質が上がる。
中には、解析しないと中身が分からない「面影」もある。その場合は、拠点にある水晶でルーンを支払って解析することで、中身を知ることができる。
武具には「ランク」と「レアリティ」という2つの基準が設けられている。「ランク」が高いと攻撃力や防御力などの基礎的な数値が向上し、「レアリティ」が高いと付与されるバフ効果の数や質が向上する。「レアリティ」が高くても、「ランク」が低い場合は、ステージを先に進んだ際に中々勝てなくなるため、多少低レアリティだったとしても、「ランク」の高い装備を選ぶ方が、ダンジョン探索の効率が上がったりする。
作成した武具は、ルーンおよび専用のアイテムを一定数消費して強化できる。敵が強く、探索に行き詰った場合は、自身の装備している武具を強化することで、ある程度対抗力を付けることが可能だ。
武具には、「魔石」という特殊な効果を持った石をはめ込むスロットが用意されている場合がある。「魔石」には火や土、光などの属性が付与されており、武器にはめ込むことで「魔石」の持つ属性を武器に付与できる。「魔石」は大穴内を探索し、敵を倒したり、宝箱を開けたりすることでランダムに入手できる。もちろん、武具と同じく、「魔石」にも「ランク」や「レアリティ」が存在する。
拠点では、生産した食品を一定数使用し、料理を作る施設もある。料理は大穴に最大3つまで持ち込むことができ、その探索中に指定のバフ効果をプレイヤーに付与してくれる。料理によって効果は様々で、体力上限が上がったり、獲得できる経験値が増えたり、特定の状態異常に対しての耐性を上げたりなど、いくつにもわたる。自分が挑むステージの特徴に合わせて、料理を選び分けることが、探索の成功率向上に大切となる。
料理の作成には元となる「レシピ」が必要だ。「レシピ」は大穴内の宝箱や「チャレンジミッション」という実績解除タスクをこなすことで入手できる。
声を失った住民と、行方不明の王を取り巻く探求型ストーリー
本作の舞台は、かつては優秀な王が統治し、繁栄したとある国。ある日、突如として王は、国民から言葉を奪い、そのままどこまでも続く大穴の中へと行方不明になってしまった。王の行方不明により悲しみにくれるお姫様は、何日も泣き続けた結果、涙の結晶に包まれ、自身は動けなくなってしまった。
そんな状況の中、お姫様の祈りに導かれて現れた7人の勇者は、「王を見つけ出し、言葉を奪った理由を知りたい」という王女の願いを聞き入れ、大穴の奥へと進んでいく。
なぜ王は人々から言葉を奪い、行方不明になってしまったのか。また、大穴の奥には何が待っているのか…7人の勇者による大穴探索が始まる。
なお、本作では物語の開始と終わりにアニメ調のムービーが展開されるだけで、道中は天の声的な、説明口調の展開しかない。ある種「紙芝居」的なストーリーテリングになっている。
◆このゲームの良い点
シンプルながらもやりごたえのあるゲーム性!
本作でやっていることは、拠点とダンジョンの行き来のみであり、一見するとあまりに単純ですぐに飽きそうに思える。
が、やってみると、それは杞憂であることがわかる。ダンジョンに登場する敵達は、ゲームが進む程に強く、そして量が多くなっていく。単純に攻撃を続けるだけでは、敵を捌き切れない場面が必ず出てくる。
- スキルで攻撃してダメージを蓄積
- 別の敵からの攻撃をタイミングよく回避
- 場合によってはその場から逃げて一体ずつ撃破
といった、アクションゲームに求められる一通りのプレイングを駆使していく必要が生じ、実にやりごたえが出た。
新ダンジョンに行くと、途端に敵のレベルが上がり、敵の属性が変わっていくため、もっと先に行こうと思うなら、装備や付与するジェムの見直しが必要になってくる。場面場面で育成機会がしっかり与えられている点も良かった。
また、どんなにプレイングがうまくても、敵に効率的にダメージを与えられるだけのビルドが整ってないと、物量に負けてしまう。本作の敵には、剣の攻撃に弱い、雷の属性に弱いなど、苦手な攻撃タイプや属性が存在している。この「敵の弱点を如何にして突けるか」というのが、大穴探索において大事で、弱点攻撃をできる場合とそうでない場合で、ダメージ効率が圧倒的に変わる。自分が今挑んでいる大穴の層に登場する敵によって、使用するキャラやスキル、付与する魔石を切り替えるのが大切であり、ビルド構築の段階でここを考える必要がある点は、ゲームとしてのやりごたえを、実に満足いくものに昇華してくれた印象だった。
値段以上のゲームボリューム!
ハクスラゲームと言えば、終わりが見えないまでの膨大なやり込み要素が大きな特徴だ。本作も値段負けはしないほど、最早それ以上のゲームボリューム量を保有している。
筆者は全キャラをある程度平均して育成するような進め方をし、裏ボスクリアまで行ったが、それまでにかかった時間は30時間以上と、6000円未満のゲームにしては相当なボリュームがある。ストーリークリア後から入れるようになる新たな大穴エリアや、難易度「ハード」や「マスター」という、敵の体力や攻撃力が更に強くなった状態でもう一度マップを周回できるようになるなど、ゲームの値段以上にやり込めるボリューム量が存在している。
また、ランダムにドロップする装備の中から、自分が望む最強の装備を選ぶことが、ハクスラの1番の魅力。7人のキャラそれぞれを最強にするための装備厳選を行おうとするだけで、多くの探検や装備集めが求められるため、それこそ無限に近しい勢いで遊ぶことができた。
それ以外にも、「指定のクラスで指定の敵を何体倒す」「全ボスを指定のクラスで倒す」など、ゲームクリアとは直接は関係しない実績要素「チャレンジミッション」というものもあり、これを全て埋めようと頑張るのも、十分なボリュームを届けてくれる要素だった。
ストーリーはシンプルで理解しやすい!
本作のストーリー進行は、ステージの途中で時折王女から話されるメッセージを聞いたり、ボスを倒した後に見ることができる石板を読んだりして内容を理解していくパートが、全体の95%を占めている。ムービーを作りこんで見応えあるストーリー展開を意識したような昨今のゲームとは雲泥の差がある。
ただ、ストーリーの質が悪かったのか、というとそんなことは無かった。内容的にはシンプルなストーリーだが、無駄に複雑な展開を用意して理解しにくくしたり、「結末はプレイヤーで考えてね」という放ったらかし状態でもなく、登場人物間で矛盾が生じるような話でもなく、誰でも理解し、納得できるストーリーだったのは、非常に良かった。タイトルの「フレデリカ」という意味がわかるのも面白い。
初めは明るく伝えられるストーリーも、進むにつれてどんどん暗く、物語の核心をついて行くような展開が出てくる。この物語の上げ下げの躍動は、平凡ではあるものの、「王が逃げた真相は結局何だったのだろう?」というプレイヤーの探究心を刺激し、先が気になるものとなった。また、ラスボスを倒してストーリークリアできた!と思っても、「実はこんなことが…」という裏ストーリーへと続いていく流れも個人的には良かった。
◆このゲームの悪い点
生産作業のユーザビリティが悪い…
本作で頻繁に使用する生産作業。これらのユーザビリティ性が全体的に悪いのが気になった。
鉄や板、食品といった素材生産では、一度生産が完了すると、生産スロット毎に素材を選び直す必要がある。ゲームが進むにつれ、一度に生産できるロット数も、生産できる素材の種類数も増えてくるため、毎回数多くある生産素材候補の中から、自分が望む素材を見つけ出して選ぶ行動が面倒になってくるのだ。一度生産する素材を決めたら、 もう一度同じ素材を生産するか聞いてくるなど、選び直す頻度を抑えて欲しかった。
また、そもそも生産にかかる時間とダンジョン冒険時間が噛み合ってないのも気になる。一度ダンジョンに入ると、大体30分位は探索を続けることになるが、メインストーリークリアまでは、生産にかかる時間は大体10分のため、拠点に戻って再度生産依頼をしない限りは、無駄な遊びが発生してしまう。かと言って頻繁にダンジョンから帰ったら探索が一行に進まないため、どっちを取るかを考えた挙句、ダンジョン探索を進めて無駄な遊びを発生させる方を取ることが多かった。
武具の作成でも不満がある。武具を作るときは、自分の装備武器と強弱を比較して、生産すべきかどうか判断したいところだが、今操作中のキャラ以外のキャラが装備している武具との比較ができないため、一々使用キャラを切り替えながら武具比較をする必要が生じてくる。これが非常にかったるい。
また、使用中キャラでも、装備中の武具と生産しようとしている武具を横に並べて数値比較ができないため、ステータスがどう高いのか、全体をぱっと見比べることができない。
料理作成も、毎回1つずつしか料理が作成できない。同じ料理を複数まとめて作れず、無駄に時間がかかる(素材生産が武具作成と比べれば小さな不満だが)。
いずれもテストプレイすればすぐに気付けるポイントだと思うのだが、なぜ気付かれなかったのか不思議でならなかった。装備厳選を頑張ろうとすればする程、このユーザビリティ性に嫌気がさしてくるだろう。
キャラ毎の性能差が多い…3つ目のクラスの解放も遅い…
7人用意されているキャラを、状況に応じて使い分けていく本作であるが、特定のキャラに強さが偏っているように感じてしまった。
個人的には、初期クラスが
- ローグ
- アーチャー
は使いやすかったため、頻繁に使っていたが、
- ファーマー
- ファイター
- キャスター
はリーチが極端に短かったり、使えるスキルが少なかったりと、イマイチな性能に収まっており、あまり使うことがなかった。というか、ローグとアーチャーさえいれば、ボス戦含めどんな敵ですら対応できるといっても過言ではないほど、使いやすく、尚且つ強かった。
また、各キャラは最大3つのクラスを獲得、自由に切り替えができるが、3つ目のクラス解放があまりに遅く、3つ目のクラスで比較的強力なスキルを持ったキャラが、その段階まであまりにも報われないのも残念だ。ネタバレになるので細かくは書けないが、ストーリー中盤とか遅めとか、という次元ではないレベルで開放が遅く、且つ開放が非常にめんどくさい。実質2つのクラスでゲーム終盤まで遊ぶことと同値なので、ここはかなり残念だった。
ビルド要素は粗め…
ハクスラの要といえば、膨大なスキルの中から、自分が育てたい方向性を決め、欲しいスキルを持っている装備品をかき集め、幾つも組み合わせていくビルド要素だ。
だが、本作のビルド要素はかなりあっさりしており、本格的なハクスラゲームと比べてみると若干肩透かしを喰らった。
まず、身に着けられる装備品は「武器」と「防具」と「アクセサリー」という3つしかなく、かつ一つの装備品に付くスキルは最大でも3つしかない。装備品に魔石を埋められたとしても、全部で18個までしか載せられない。また、スキルが3つあったとしても、そのうちの一つは「経験値獲得効率やルーン獲得効率を上げる」という、戦闘とは関係がないものが大半であり、その分実質のビルド要素は減らされて行く。
複雑なシステムではないため、ハクスラ初心者にはありがたい仕様だろうが、ハクスラゲームとして宣伝している割には、その良さがあまり無いのは残念だった。
見た目に反し、ゲーム難易度は高め…
悪い点としているが、筆者は寧ろ高難易度ゲームの方が好きであり、本作の良い点としても上げている。だが、本作を購入するであろうユーザー層を加味すると、悪い点に上がるのではないか?と考えたため、ここに挙げておく。
全体的に、小学生向けのような可愛らしいイラストで構成された世界感であることや、ほのぼの生活系ゲームである「牧場物語」をベースにしたスピンオフ作品のような見た目から、本作の難易度はそこまで強くないように見える。実際、序盤までは無難なアクションゲームに収まる難易度だ。
だが、中盤に入った辺りからガラッと難易度が変わってくる。敵の数がどんどん多くなり、体力の多い敵が増え、近接攻撃をする敵と遠距離攻撃をする敵を同時に相手にするようになるなど、アクションゲームをそれなりにやったことのある人でないと対処が難しい場面が増えてくる。
アクションゲームをかなりやる筆者でも、中盤〜終盤にかけては、ちょっと油断したプレイングをすると途端にピンチになり、そのままゲームオーバーになる機会が結構あった。これで最低難易度「ノーマル」だと言うのだから驚きだ。
ちゃんとレベル上げをしたり、敵の弱点をつける武具を揃えたり、スキル構成を見直したりすれば勝てるようになってくるが、それでも数多くの癖のある敵を相手にしないといけない点は変わらない。「アクションゲームは本当に苦手で、何回か負けちゃうと挫折しちゃうんだよね…」という人は、クリアできずに終わる可能性があるため注意してほしい。
◆まとめ
軽微なハクスラゲームという体を成していながらも、アクション性やボリュームがしっかり備わっていた作品である「FREDERICA」。
ハクスラというジャンル上、「人を選ぶ作品」ではあるが、値段に対して十分なクオリティを提供している作品だとは感じている。このゲームの特徴をしっかり理解した上で、「ハマりそう!」「面白そう!」と思ったなら、購入して遊んでみて欲しい。
では!