今回は、PS5版の「SALING ERA」をプレイした感想と、このゲームの良い点、悪い点をまとめていこう。
(本記事の情報は2024/10/13時点を元にしている)
2023/1/11にリリースされた「SALING ERA」。昨今ゲームソフトの価格が増えている中で、3850円という安価なゲームである。筆者は昔、「大航海時代」をやったことがあり、その時は他のゲームでは見たことの無い、航海と経営のシミュレーションゲームにドはまりしていた。
それからかなりの日数を経て、似たような作品である本作を発見。気になって購入してみたので、いったいどんな作品なのか、遊んでみた感想をまとめてみたいと思う。
◆個人的感想
総評
大航海時代を描いた海洋探索シミュレーションとしては、商売、探索、戦闘という必要要素は一通り揃っており、そのどれもがしっかりとした面白さを提供してくれている。ゲームボリュームもあり、難易度も簡単めなキャラから、難しい対応を求められるキャラまで様々なバリエーションが用意されていて、値段以上にやりごたえのある作品へと仕上がっているのは確かだった。
が、プレイヤー側に対して、それらをストレス無く使えるようにする作り込みが浅い。遊べば遊ぶほど、痒いところに手が届かない様が現れる。
総じて70点ちょいの作品と言ったところ。せめて世界地図上などに必要事項をもっと表示させる機能が充実していたら、評価は高くなったはずで、非常に勿体ない作品だった。
こんな人にオススメ!
- 自由なシミュレーションゲームがやりたい!
- ボリュームの多いゲームがやりたい!
- 探索、収集要素のあるゲームが好き
という人にはオススメできる。逆に、
- 親切なUIじゃないとやる気を無くす
- 細かいバグでも連続されると気になってしまってムリ
- 戦闘、経営、探索などの各項目に深く作り込まれたシステムを期待する
という人は購入を止めた方がいいだろう。
◆このゲームの特徴
海洋探索主体のシミュレーションゲーム
本作は、太平洋、大西洋、カリブ海など、実際に存在する海を船旅で周りながら、目的の街へと到達することを目指す、海洋探索が主体のシミュレーションゲームである。似たゲームとして、一昔前にあった「大航海時代」が挙げられる。このゲームをやったことがあるプレイヤーであれば、すんなり受け入れられるだろう。
大陸の沿岸部には、実際に存在する街が連なっている。プレイヤーは実際に船を操作しながらそれらの街へ訪れ、商売のための商品を仕入れたり、各種アイテムを購入したり、船員を集めたりしながら、ストーリー目標達成を目指していく。
どの街をどのように回っていくかはプレイヤーの自由。特に大きな縛りはない。用意されたストーリーラインにそって遊ぶもよし、いきなり全世界の街を周りきるのもよし、ただ財宝を探し回るのもよしだ。
海洋、陸上の両方を探索する探索要素
本作の醍醐味は、世界の海を舞台にした航海だ。航の操作はシンプルで、風向きを見ながら船の向きと速度を決めるだけで船が前に進むため、複雑なボタン操作はいらない。
未踏派の海上エリアの地図はモヤがかかっており、どこに陸や街があるのかわからない。行く先を自分で決め、食糧や乗組員を調整しながら、船員が限界を迎える前に街に到着できるよう探索を進める。
一度訪れたマップも、探索モードで探索する事で、まだ見ぬお宝や秘境を見つけることができる。
航海中には、良いことも悪いことも、様々なトラブルが発生する。トラブル時にプレイヤーが取った行動により、食糧の増減や船員の士気の上下、船の損害などが発生するため、最適な対応を取ることが求められる。
船員を多くし、突然の戦闘やトラブルにも柔軟に対応できるようにしてもいいが、それだと食糧の消費量が増え、遠くまで航海ができなくなる。このバランスを考えるのが大切になる。
海上探索ではなく、地上を探索することも可能。宿屋が隣接した街や、専用の探索拠点が用意されている場所では、船員や食料、アイテムなどを持ち込んで、地上を探索することができる。地上探索でしか見つけられないアイテムや遺跡も数多くあるため、世界をより深く遊ぶには避けては通れない要素になっている。
世界各地での取引や契約による資金調達や施設発展
冒険の鍵になるのは食糧とお金。とくにお金は、食糧購入にも船の修理にも不可欠なため、非常に重要な要素になる。そのため、街には様々な資金調達要素が用意されている。
交易品を売買できるお店は、本作で1番使う施設。お店で売られている交易品は街によって異なる。手持ちのお金を使用して交易品を購入後、他の街のお店で売却することで、差分の利益を獲得できる。
各街には景気が存在し、不景気であれば交易品が安くなり、好景気であれば高くなる。また、特定の地域の交易品のみ売却金額が高くなることもある。これらを考慮し、如何に安く仕入れ、高く売却するかを考えながら、交易ルートを決めていく。
交易品は、お店での売却以外にも、「商人ギルド」で交易契約を結び、指定期日までに納品することにも使用する。納品難易度の高い公益品や、大量の公益品の納品依頼になればなるほど、達成時に貰える金額が上がる。
交易品の売買以外にも、懸賞金のかかったお尋ね者を討伐して、賞金を獲得する方法もある。こちらは戦闘が発生するため、損害が発生するリスクがあるが、その分手に入る報酬も高い。
お店で売買をしたり、納品依頼や討伐依頼を達成すると、その街に対する貢献値が上がっていく。一定値まで貢献値が到達すると、購入可能な交易品が増えたり、関税が免除されたり、街を更に発展できるギルド建設が可能になったりする。
貢献値を貯める事で解放できるギルドでは、お金を一定数投資することで、人口を増やしたり、街の技術力を上げたりすることが可能。これにより、お店に並ぶ商品を増やしたり、自動で交易をしてくれる交易船を解放したりできる。
船を操作し、砲撃や近接で戦う海上戦闘
海上では、海賊船がそこら中をウロウロしており、近づくと海戦が開始される。
海戦では、船を操作して左右の砲台を敵に負け、引き金を引いて大砲を発射し、敵の船を攻撃する。それ以外にも、敵船に近づいて白兵戦を仕掛けることも可能だ。敵チームのリーダー船を破壊するか、リーダー船の乗組員を0人にすることで勝利となり、敵の持っている財宝を持ち帰れる。
プレイヤーが操作していない船には、 仲間の船員をキャプテンとして任命しておく事で、そのキャラの戦闘方針に沿って、自動で攻撃を仕掛けてくれる。キャプテン任命された他の船との連携で大ダメージを与える方法も用意されている。
予期せぬ戦闘で戦える状況ではない、という場合は、戦闘圏外へ一定時間離れれば逃亡できる。
財宝や仲間を入手できるサブ任務や手がかり探索
街では、財宝や伝説の噂がそこかしこで流れている。手に入れた情報を手掛かりとし、怪しい場所を訪れることで、未知の財宝を見つけられる。
街の酒場にいる看板娘と仲良くなってからでないと手に入らない情報も存在する。
航海を進めていくと、何かしらの困りごとのある人物や、仲間になった船団員の相談事を受ける機会が発生する。それらは「サブ任務」といい、メイン任務とは別だ。これをクリアする事で、経験値の入手等だけでなく、任務内容によっては新たな船団員の獲得ができる場合もある。
レベルアップやスキルセット、武具装備による成長要素
新たな街に訪れたり、任務を攻略したり、未知の遺産を見つけたりといった、航海中に遭遇する多くの要素で、一定の経験値を入手できる。この経験値を船員に自由に振り分けることで、船員のレベルを向上させ、船員自身の性能を引き上げることができる。
また、各キャラには戦闘や交渉、マッピングなどの細かなスキルセットが割り当てられており、スキルの値が高い程、該当する専用の能力が上がる。このスキルは、レベルを15レベル分あげる事で1ポイント貰えるスキルポイントを振り分けて、プレイヤーの好きに強化していける。
各キャラは、武器や防具、補助道具などを最大4つまで装備可能。体力や攻撃力といった基礎パラメータだけでなく、道具の効果に該当するスキル値を装備中のみ増加させられる。
これらの道具は、陸地の探索や、海上戦闘の戦利品、武器屋での購入などで手に入る。
4人の航海士の物語を追うストーリー
ゲーム開始直後、プレイヤーは世界4箇所にいる主人公の中から、遊びたいキャラを選ぶ。筆者は同じ日本人である「静間芳隆」を真っ先に選んだ。
各キャラは、船旅に出る目的も、目的地も、クリア条件も、はじめに仲間になるキャラも異なる。ストーリーは細かな章立てとなっており、各章の最終目的を達成する事で、次の章へと進むことができる。
選んだ主人公毎に、ゲーム内のミッション難易度が変わってくる。初めて本作をプレイするなら、最も波乱万丈感が薄い「アンドリュー」を選んだ方がいいだろう。
◆このゲームの良い点
やれることのバリエーションの多く、自由度が高い!
本作のメイン要素である海洋探索だけではなく、
- 世界各国の陸地の徹底探索
- 世界中に散らばった遺跡や自然現象の収集
- 数多くの仲間集め
- 世界中の街と貿易ラインを結び、貿易王になる
など、色々な楽しみ方を提供してくれている点が大きな魅力だと感じた。要素一つ一つのシステムが作り込まれているか、というとそうではないが、ここまで色んな要素、楽しみ方を提案してくれているのであれば、これでも十分だと感じる。
ストーリーが用意されてはいるものの、それはあくまでおまけ。ストーリークリアだけを見れば世界全てを探索する必要はなく、隠された財宝を集める必要もない。ストーリーを進めないと行けないエリアがある訳でもない。お金と貢献値さえ稼げれば、ストーリーの第1章の段階から、全ての街を繋ぐ一大貿易網の親玉になる事だってできる。
どんな目的でどこを目指すのか、全てプレイヤーの思いを自由に叶えてくれるため、「次はこれをしてみようかな」という気分が次々に発生し、気付いたら時間が過ぎるほどだった。
ストーリー、収集要素等、価格以上の超ボリューム!
本作には、主人公が4人も用意されており、かつ一人分のボリュームも比較的多い。筆者はある程度の資金調達だけを行い、サブ任務は7,8個程クリアしたほどで1周目をゲームクリアしたが、それでも1人分をクリアするだけで約23時間かかった。全部のキャラのストーリーを見届けたり、サブ任務をしっかり攻略していけば、それこそ100時間近くは遊べるはずだ。
登場人物全員を仲間にしたり、世界遺産や収集品を集めまわったりすると、ゲーム内に用意された「知識」フォルダへ情報が書き加えられている。これらの「知識」を全て集めていくように世界各地を回れば、より沢山このゲームを味わうことができるはずだ。
一度ゲームをクリアすると、前のストーリーの探索度合いに応じたポイントを入手できる。新たなゲームを開始した際に、そのポイントを消費することで、航海地図をはじめから入手したり、大量のお金を持った状態でゲームを始められたりなど、冒険をサポートするアイテムを初めから獲得できる。それらがあれば、ストレスを抑えながら冒険できるため、周回プレイ特有の既知感に悩まされることも少ない点も良かった。
4000円未満の作品で、ここまで充実したプレイ時間を楽しめるのは良かった。
訪れる国々の言葉が流れ、冒険感がある!
街のお店や酒場に入ると、短文ではあるが必ず音声が流れる。その音声は、実際にその街がある国の言葉で流れるのは驚いた。長崎や江戸などの日本の街なら日本語で、海州などの中国圏内なら中国語で、イギリスでは英語が流れるのだ。
小さな要素だが、これがあるだけで「ちゃんと冒険をしているんだ」という感覚を味わえるため、個人的にはプラスポイントだった。
…まあ、たまに明らかにその街にあってない言語が流れたりもするが、そこは目を瞑ろう…(那覇で中国語が流れたりとか…)
◆このゲームの悪い点
後一歩足りないUIが数多くあり、ストレスがたまる…
プレイし始めて数時間までは楽しく遊べるが、段々と本作のUIの悪さ、分かりにくさが目立ち、イライラが募ってくるのはマイナスだった。
- 交易品の入手可能場所
- 討伐対象の敵がいるエリア
- 貿易依頼の納品先や、討伐結果を報告する街
など、このゲームで1番使うことになり、その分すぐに把握したい情報を、画面上に表示するUIがとにかく不親切。特に、どの街で何の依頼を受けたのか、その依頼は報告できる状況なのか、を、いちいち任務ページと世界地図を行き来して確認しないといけなかったのは非常にめんどくさかった。
探索領域が狭い序盤はまだ気にならないが、後半になるにつれ、隣の海域にある街の商品を求められたり、遠く離れた場所にある敵が討伐対象となったりするため、世界全体の地理的知識や管理が非常に大変になる。
効率的にゲームを遊ぶなら、自分で世界地図を書き、そこに街をプロットし、商品の逆引き辞典を使って、都合に応じて確認するような動きが必要な程だ。
納品依頼や討伐に期限が設けられているのも良くない。期限までに条件を満たし、依頼を受けた街で報告しないと、条件未達どころか、その街での貢献値を下げてしまうため、そうなるとまた貢献値を上げ直さなくてはいけない。
さすがにもっと親切なUIを作ることくらいできるだろう…と、なかなかに呆れてしまった。
大なり小なりバグが目立つ…
日本語が崩れて表記されていたり、チュートリアルの文章が途中で見切れて見れなくなっていたりなど、ローカライズにうまくいってない要素が散見される。
任務名に書かれている街と、実際の地図上の街の名前が合ってないのは1番酷かった。どれだけ探しても、任務に書かれた街が無く、攻略サイトを見て初めてどこのことか分かった場面もあった。
また、一度通って海路が書けたはずの場所が、街に入ると途端に隠れて見えなくなってしまったりすることも頻繁に起きた。こうなると、また同じルートを通って海路を書き直す必要があり、非常にめんどくさい。どうやら、特定のルートに沿って海路を書いていけば消えないようなのだが、それがどういう基準で決まってているのか、最後の最後までわからなかった。
一番ひどいバグでは、セーブデータをロード時にフリーズし、ゲームを強制終了しないといけない時があった。幸いにも、このゲームは頻繁にオートセーブが入ってくれるため、すぐ手前のデータから再開始できるが、セーブデータそもそもが破損するリスクもあるため、かなり心配になった。
戦闘時の味方の動きが制御できず、事故が多発…
戦闘時、各戦艦はプレイヤーの意思に従わず、船長の考え方に従って行動する。この時、
- 敵艦隊から逃げろ
- 特定の艦隊だけ狙え
- 遠距離戦闘のみ使え
といったような指示出しはできない。個々人が勝手に、思い思いに移動するため、プレイヤーも想定していなかったような事故が度々発生し、艦隊を失うことに繋がりやすいのはいらだった。
特に、船長に接近戦型の考えを持つキャラを設置すると、勝手に敵の艦隊に突っ込み、船員を消耗し、自滅する、という目も当てられない事態になりやすい。
色々できることを多く取り揃えている作品なのだから、戦闘の指示出しという部分でも、プレイヤーの思い思いの戦いができるようにしてほしかった。
◆まとめ
海洋シミュレーションゲームとしては色々なことができる反面、UI面や戦闘面などで今一歩足りない要素が散見されてしまうため、ずっとプレイしているとストレスが蓄積してしまうゲームであった「SALING ERA」。
ゲームを攻略するようにプレイするのではなく、「自分自身が航海士として海に出て、冒険していくために船団を管理していく」という気持ちでプレイすると、本作を楽しめるのでは無いだろうか。ちょっとめんどくさい楽しみ方であるが…
では!