今回は、「SILENT HILL 2」のリメイク版について、このゲームの特徴や良い点、悪い点をまとめていきたい。
(本記事の情報は2025/9/10時点である)

2001年に発売された傑作ホラーゲーム「SILENT HILL 2」をリメイクした本作。複数出ている「サイレントヒル」シリーズの中でも特に人気で、熱烈なファンが多くいる作品だといわれている。
筆者は原作を遊んだことはないが、リメイク版の評判が非常に高いのを見て、かなり時間が経ってから購入。一通り遊んでみたため、本作に関する感想をまとめていきたい。
なお、筆者は本作の発売が発表される前に、Youtubeでストーリー解説動画を見ていたため、ストーリーをおおむね知っている状態で遊んでいる。その前提で書いた記事であることを念頭においてほしい。
総評
原作の良い点を純粋に膨らました作品なのは間違いなく、高評価なのも納得できる。ただ筆者個人としては…普通ゲーだなぁという印象を受けた。ゲームではなく、映画として作った方がよかったのでは…というのが正直な感想だ。手放しに「おススメするよ」とは言い辛い作品だった。
サイコホラーの恐怖感演出は素晴らしい。崩壊した暗闇空間を小さなライトで照らしながら先へ進むのは、ジトっとした、他ゲームでは味わえない恐怖を展開しており、ホラーゲームとしての楽しみを全面に押し出していた。また、結末を知っていても魅了されるストーリーテリングはさすがの一言だ。
ただし、昨今のゲームレベルの育成や戦闘システムは存在しておらず、あくまで原作のシステムを踏襲したものなので、ゲームとしての目新しさが薄い。また、真っ暗な中を探索する描写の乱用により、プレイしていると恐怖より疲労が目立ってしまうのは残念だった。更に、舞台背景の理解には、一生懸命考察するか、Youtubeなどで解説情報を読むかしないといけないのも、若干マイナスポイントだった。
どんな人におすすめ?
- 謎解き型サイコホラーゲームが好き!
- 考察し甲斐のある作品が好き!
- びっくり演出の少な目なホラーゲームがやりたい!
- 2001年発売の原作が大好き!
といった人にはオススメできる。逆に、
- 周回要素は遊ばない
- 考察要素は少なめで、わかりやすいストーリーが見たい
- 戦闘や育成システムが充実したゲームがやりたい
といった人には合わない可能性があるため、注意してほしい。
このゲームの特徴
不気味な閉鎖空間を探索する謎解き×ホラーアクション
本作は、奇妙なクリーチャーからの襲撃を切り抜けながら、各地に散らばった謎を解きいて物語を進めていく謎解き×ホラーアクションのゲームである。
本作の舞台「サイレントヒル」は、深い霧に包まれ、人が誰もいない奇妙な街。また、道中に訪れる施設である「アパート」や「病院」などは、いずれも閉鎖的で真っ暗な場所が多い。プレイヤーは小さな懐中電灯を片手に、うっすらとしか照らされない道を進みながら、先へと進んでいくこととなる。


各エリアには、異形の形をしたクリーチャーが徘徊している。中にはただのオブジェクトに見えて、近くを通ると攻撃してくる厄介なクリーチャーもいる。
クリーチャーの撃退には、近接攻撃で殴り倒すか、銃で遠距離から倒す方法が存在する。銃はハンドガンだけでなく、ショットガンやライフルなどが存在し、いずれも火力が高く、遠距離から安全に攻撃できる手法だが、銃の使用には弾薬が必要になるので、弾薬の残数と相談しながら使うことになる。
- どの敵にはどういった武器で戦うのか
- そもそも戦わず逃げるのか
などの選択を適宜行い、最適な対処法を持って切り抜けていく必要がある。
クリーチャーから攻撃を受けた際は、タイミングを合わせて回避することができる。クリーチャーの動きをよく見て、しっかりと回避していけば、重火器を使わずとも撃退することは十分可能だ。


施設には、鍵のかかった部屋や、謎めいたオブジェクトなどが散りばめられている。ストーリーを進めるには、これらの謎を解いていかないといけない。
謎を解くためのヒントは、大量に存在する小部屋に点在しているので、プレイヤー自身でマップを隅々まで探索していくこととなる。ダイレクトに答えを表示してくれるものもあれば、ちょっとしたコメントしかなく、プレイヤー自身で頭をひねって回答を導き出すようなものもあるので、そのような謎に直面した場合は一筋縄ではいかない。


ユーザに合ったゲームプレイ設定
本作では、敵の強さを全3段階から選ぶことができる。一番下の難易度にすれば、アクションゲームが苦手な人でも戦いやすいゲーム性となる。戦闘難易度はゲーム中いつでも変えることができるため、ゲームを遊んでいる中で「勝てないな」と思うなら、難易度を下げてゲームを楽しむことができる。
また、謎解きにも全3段階の難易度設定が可能。謎解きは難易度ノーマルでも、一部は考えこまないといけないような歯ごたえがあるため、「謎解きが苦手だな」と思う人は、謎解き難易度を一番下に下げることで、手軽に遊べるようになる。
霧に包まれた街で、亡き妻「メアリー」を探す男の物語
本作の主人公「ジェイムス・サンダーランド」は、3年前に亡くなったはずの妻「メアリー」から、「サイレントヒル」という街で待っている旨の手紙を受けとる。亡くなったはずの妻から来た手紙を不信に思いながらも、もう一度妻に会えるかもしれない、という希望を旨に、「ジェイムス」は「サイレントヒル」を訪れる。

しかし、訪れた「サイレントヒル」は深い霧に包まれ、住民の姿は見えず、果ては異形の怪物がうろつく怪しい街となっていた。それでも「ジェイムス」は、ここに妻がいるかもしれないという思いを胸に、「サイレントヒル」の街を探索すべく足を進める。
果たして「ジェイムス」は妻である「メアリー」に会うことができるのか…「ジェイムス」の心理を描いた、まったく新しいホラーストーリーが幕を開ける。
このゲームの良い点
超一級のサイコホラーTPSゲーム!
本作のホラー要素の大きな特徴は、ジャンプスケア(びっくり要素)をあまり使用せず、プレイヤーの心理に対して「不安」「恐怖」「憎悪」といったような負の感情をじわじわと迫るような表現手法を使っている点にある。
探索するマップは、
- 綺麗に整頓されていながらも無機質味が溢れる病棟
- 血や鯖がそこらじゅうに散らばったリビング
- 狂気的な出来事があったことを感じるような悲惨な独房
といった舞台が多く、「サイレントヒル」という不可思議な街の気味の悪さを全面に押し出してくる。施設の多くは電気が通っておらず真っ暗なため、プレイヤーは小さなライトを使って探索を進めていくのだが、周囲が暗いと段々環境音に対して敏感になっていく。そういった中で急にすすり泣く声や、ドアを叩くような音が聞こえてきたり、敵が近くにいることを知らせるラジオのノイズ音が聞こえてくると、「ウッ」となるような、ひやりとした恐怖感が襲い掛かってくる。
- 変な音が横から鳴ったんだけど、横の部屋に入ると何か出てくるのかな…
- キーアイテムが目の前にあるけど、これを拾った瞬間に後ろから敵が襲ってこないかな…
というような、「周囲の環境から想像してしまう恐怖」は、ただの恐怖体験ではない、上質な恐怖体験をプレイヤーに提供してくれていたと感じた。


登場人物を取り巻く、暗くも考えさせれるストーリーは良い!
前述のとおり、筆者は本作のストーリーをあらかじめ知った上でプレイしている。しかし、結末を知っていても圧巻されるストーリーはやはり凄い。ネタバレになるので細かくは書けないが、「現実でも、こういう悩みを抱えている人は数多くいて、個々人が悩みながらも正解を模索して生きているんだろうな…」といった感傷に浸れるようなストーリーは見事。
本作はマルチエンディングシステムを採用しており、道中にプレイヤーが取った行動や集めたアイテムによって結末が変わる。悲しくも感動的なエンディングから、少しハッピー寄りなエンディング、中には闇を感じさせるようなエンディングまで存在。そのどれもがある意味「正解」であり、「自分が『ジェイムズ』だったら、どういう決断を下したのだろうか…」と色々悩まされた。
また、本作では「ジェイムス」以外にも、同じく「サイレントヒル」に迷い込んだ他キャラも存在しており、各キャラにも個別のストーリーが設けられている。特に、自信なさげな女性「アンジェラ」は、かなりグサッと来るストーリーであり、人によっては受け入れられないかもしれない…(「アンジェラ」のストーリー関連で戦うボスのえげつなさと言ったら…)
ゲームを起動すると、
本作では家庭内暴力、精神的虐待…(中略)…等の成人向けのテーマが含まれています。これらの内容に不快感を覚える場合、またはメンタルヘルスに関する情報が必要となる場合は…
という注意書きがなされる。本作を遊んでいると、その意味が非常にわかるものとなっていた…


ユーザーフレンドリーなゲーム設計!
複雑で広大なマップを探索することになるので、プレイ中は頻繁にマップを開き、自分がいる位置や目的地を比較していくのだが、その際のマップ表現が実に優れている。
- 鍵がかかった部屋がどこか
- 謎解きが必要なオブジェクトがあった場所がどこか
- 意味深な落書きが書かれていた場所はどこか
- 開通されているドアの場所はどこか
- 謎解きの結果わかった暗証番号が何なのか
など、一度訪れたものの探索し続けていると忘れてしまう要素を勝手にマップに書き込んでくれるので、見直しがしやすい。これは探索メインの他のゲームでも積極採用してほしい要素だと感じた。

オプション設定も充実している。見落としにくくするため、オブジェクトやキャラに色をはっきり付けるオプション設定がある。更に、画面見えを90年代風のテイストにしたり、モノクロにしたり、といったゲーム体験の多様性も提供している。

キーバインドの設定変更も完備。筆者は、回避ボタンがデフォルトで○ボタンだったところをR1ボタンにし、逆にR1ボタンに割り当てられていたクイックターンを○ボタンにすると操作がしっくり来た。
周回要素によるやり込みプレイ!
筆者は、全ての難易度をノーマルとして、クリアにかかった時間は約15時間だった。「バイオハザードRE4」や「サイコブレイク」などの育成要素も含んだアクションホラーを除き、探索や謎解き要素が充実しているタイプのホラーゲームでここまで長めなプレイ時間を持つのはあまり見ない印象で、長すぎず、短すぎずで非常によりボリュームだった。
前述のとおり、本作はマルチエンディングを採用しているので、周回プレイをして別のエンディングを見るような遊びが前提となる。クリア後に解放されるNew game+でしか手に入らない強武器もあるので、それを駆使すれば周回も比較的やりやすいのもよい。
このゲームの悪い点
全体通して流石に暗すぎる…
個人的には、恐怖感の演出には、明暗の違いをはっきり出す必要があると思う。基本は周囲をそれなりに明るく照らして、探索や戦闘も負荷なく遊べるようにした上で、所々で真っ暗な空間を用意することで、「怖いな」「この先には行きたくないな」という恐怖感が出てくる。まさに「暗闇が緊張感に繋がる」状態だ。バイオハザード7やサイコブレイクあたりは使い方が上手かったと感じる。
今作はゲーム全体を通して、探索するあらゆる場所が「非常に暗く、かつ小さな部屋が入り乱れている空間」であり、そういった場所で弾薬や回復薬の収集、謎解き対応、敵との戦闘をこなしていかないといけない。始終画面が暗いと、暗闇による恐怖に次第に慣れるため、敵が現れても「はいはい」という手慣れた感覚になってしまう。更に、真っ暗な中で無数の探索をさせられると、無意識に画面全体をじっと凝らしてみる機会が増え、非常に疲れる。「暗闇が疲労感に繋がる」状態となり、良い印象が持てなかった。最後に訪れたマップ(綺麗な方)の感じがずっと続くのが、個人的には一番いいと思った。

一応、オプションで輝度を細かく変えられるようにはなっている。これをいじれば多少は遊びやすくなったが、それでも暗すぎることは変わらない。下手に明るくすると、マップを開いた時の白飛びが激しく、目が痛くなるのも残念。マップの背景色を暗めにする設定なども欲しかった(実はあるのかな…だとするとその辺りの説明も不足していると感じる)。

育成要素がなく、戦闘要素は淡白…
本作には、昨今のホラーアクションにあるような「キャラや武器の育成要素」は一切ない。原作にこの要素がなかったらしいので、リメイク版でも踏襲したのだろう。ただ、銃や打撃武器を使ったアクション要素を多分に入れるなら、武器のアタッチメント追加とか、近接武器種類を増やすとか、何かしらの育成要素はあってもよかったのでは、とは思った。
また、戦闘も結構淡白なのが残念。序盤は少し苦戦するものの、敵の種類も攻撃モーションも少ないので、しばらくすると敵の攻撃にすぐに対処できるようになり、「歯ごたえ」があまり感じられなかった(これは、筆者が高難易度ゲームを色々やった経験値を持っているせいもあるかもだが)。回避だけでなくガードも用意し、ガードで対応できる技、回避で対応できる技を区別するとか、ジャスト回避すると敵の姿勢を崩せるとか、そういう要素もあると、もっとアクションに対する印象を強く残せたので勿体ない。
…まあ、一般人である「ジェイムス」がそこまでできると世界観が壊れるし、バチバチなアクションゲームに寄っていってしまうので、これはこれで賛否別れそうな気はするが…
考察前提の要素が多すぎる…
ここは人によってはプラスな場合もあるが、筆者の好みとしてはマイナスだったので、マイナス点として紹介する。
本作の舞台背景は、プレイヤー側に「解釈」を求める構造になっているのが特徴だ。ただ遊ぶだけでは、
- 敵対するクリーチャーの大半は女性の格好に近いのだが、それが何故なのか
- 「メアリー」と瓜二つの「マリア」は一体なんだったのか
- 他の登場人物と「ジェイムス」とで、見えている世界が違うような反応をするのはなぜなのか
といった多くの謎が明かされない。謎を解く情報は、フィールド上に断片的に提示されるのみなので、プレイヤー自身で情報を繋ぎ合わせ、解釈していくこととなる。中には初代「サイレントヒル」を遊び、サイレントヒルがどういう街なのか、という事前知識を知らないと、どう頑張っても理解できないものもある。
筆者は前述のとおり、事前に解説動画をYoutubeで見て、大体の知識を持った上で本作をプレイしたため、そもそも謎ポイント自体が存在しなかったが、もし本作に関する予備知識なくプレイした場合は、「…で、なんでそうなるの?」という疑問点が大量に残って終わったのは間違いなかった。
伏線の散りばめ方や考察できるポイントの多さは物凄い。解説動画を見ながら本作をプレイすると、「確かにそういう描写がゲーム中にあったわ!」とか、「そう考えると辻褄が合う!」と驚嘆するのは間違いなく、本作の舞台表現に対する制作陣の作り込み熱は伝わってくる。が、考察が大好きなプレイヤー以外は、解説動画ありきのデザインなのはちょっとマイナスに感じた。

フレームレートが安定しない…
ムービー中、時々だが、フレームレートが低下し、少しガクガクとした描写が行われたのは気になった。幸い、戦闘中にそのような描写になることはなかったので、プレイする上で不満につながることはなかったものの、PS5版ですら最適化が上手くいっていないのかな?というような疑念を抱いてしまった。
スタックやバグが時折発生…
- ゲームがPS5本体のソフトウェアにトラブルを起こし、PS5本体が落ちたことが1回
- 階段や崖の近くでスタックし、まったく動けなくなってしまったことが2回
というような不具合に遭遇した。回数的には多くはないものの、ゲームの進行に影響するようなトラブルのため、もう少し何とかしてほしいと感じた。
スパイダーマネキンの動きはやりすぎ…
本作の敵の一つ「スパイダーマネキン」は、動きが非常に早いうえ、地面や壁を自由に動き回る能力を持つ。本作は周囲が常に暗いので、「スパイダーマネキン」の居場所がつ掴みにくく、位置がわかってもロックオンやターゲットエイムアシスト(敵の近くまでエイムを持ってくるとスローダウンがかかり、照準を動かしながらのエイム合わせがしやすくなる技術)がないので、動き回る「スパイダーマネキン」に狙いを合わせにくい。そんな敵が、物語中盤を過ぎると複数出てくるものだから、たまったものではない。
筆者はシューティングゲームを頻繁にやるのでそこまで苦戦しなかったが、シューティングゲームをあまりやらない人にとってはクソ敵と思われても仕方がなく、ゲーム進行を大きく阻害する異常なストレス要因になってしまわないかな、と心配になった。
まとめ
原作の良さをしっかり活かした作品であった「サイレントヒル2」。原作自体が古く、できるゲームシステムに限りがあるので、昨今のゲームとしてみると少し物足りない印象を受けてしまった。
しかし、ストーリーや恐怖体験という分野ではここまで作りこまれているゲームはそうそうないと思う。本作のゲーム性をしっかり理解した上で購入すれば、良質な心理描写とサイコホラーを味わえる、忘れられない神ゲーになると思うので、特徴を抑えたうえで本作を購入してみてほしい、
では!
