今回は、PS5版の「アライアンスアライブHDリマスター」について、このゲームの特徴や良い点、悪い点をまとめていきたい。
(本記事は2024/4/29時点の情報をもとにしている)
2019年10月10日に発売された「アライアンスアライブHDリマスター」。もともとは2017年6月22日にニンテンドー3DS用ソフトとして発売された作品のリマスター作品である。
発売からかなりの時間が経った後に本作を見つけ、気になって購入!1週目のクリアまで達成したため、本作がどんなゲームなのか、どんな人にオススメなのか、まとめてみたいと思う。
◆個人的感想
総評
ステータスのランダム成長、という特殊な育成要素を持ったゲームだが、実際遊んでみると非常に遊びやすいコマンドRPGとなっている。寄り道要素や周回要素もあり、周回向けの細かな配慮が各所にされているのも好印象だ。
グラフィックが良くない点や、ちょっとゲームバランスが悪い点が見られる点は残念ポイントだが、それらを差し置いても全体的に「良作」で、RPG好きならプレイしてみることをお勧めする。
どんな人におすすめ?
- コマンドRPGが好き
- 周回要素が欲しい
- 30時間前後で終わるゲームがやりたい
といった人にはオススメできる。逆に、
- グラフィックにこだわりたい
- 育成にあまり時間をかけたく無い
といった人には合わないかもしれない。
◆このゲームの特徴
シンボルエンカウント方式のコマンドRPG
本作は、世界中に用意されている町やダンジョン、フィールドマップを往復しながら冒険を進めていくコマンドRPGだ。正に「ドラクエシリーズ」に近いゲーム性である。
フィールドやダンジョン内にはモンスターが徘徊しており、プレイヤーに接触するとバトルに突入するシンボルエンカウント方式をとっている。敵はこちらを見つけるとかなりの速度で追いかけてくるため、戦いたくないなら全力で逃げる必要がある。
本作のバトルシステムは、RPGにはよくあるターン制コマンドバトルを採用。通常攻撃、戦技、印術、魔術といったコマンドの中から、キャラ毎に行いたい内容を選択し、敵味方合わせて俊敏さが早い順に行動が行われていく。敵の殲滅をすれば勝利、ステータス増加や、戦利品の獲得が行える。
バトル中に一定量のやる気が溜まると「イグニッション」というステータスとなり、装備武器を犠牲にして発動できる強力な技「ファイナルストライク」が使用できる。「イグニッション」後も通常通り戦い続けるか、「ファイナルストライク」で一瞬で戦闘終了を目指すのか、駆け引きが大切になる。
体力が尽きたキャラは、宿屋で休憩するまで体力の最大値が一定数減少する。体力が尽きる度に上限が下がっていく為、なるべく無理しない、計画的な探索が必要になる。
「勝てない」と判断した場合は、ボス戦を除きいつでも逃走可能だが、その場合はしんがりを務めるキャラの最大HPが一定数減るため、誰をしんがりとするか選択が重要だ。
フォーメーションを切り替えながら戦う戦闘システム
基本的にはよくあるコマンド型の戦闘システムだが、他ゲーに無い、本作ならではの特徴が「フォーメーションの存在」だ。
フォーメーションとは、
- 防御性能が上がる「GUARD」
- 武器や魔法での攻撃性能が上がる「ATTACK」
- 素早い行動ができたり、回復効果が上乗せされる「SUPPORT」
という3種類のポジションに対して、各キャラをどこにはめ込むのか、事前に決めておくことである。同じATTACK系でも、素早さを落とす代わりに火力上げたスタイルや、火力と素早さの両方を少し上げるスタイルなど、様々な特徴がある上、キャラを前列、中列、後列のどこに配置するかによっても、与える火力や敵からの狙われやすさが変わってくる。
多少行動速度は遅くなっても、前線で高火力を出す「ATTACK」役として攻める戦いも、スピードを重視し、後列の「ATTACK」として被弾を避けながら攻める戦いもできる。思い思いのフォーメーションを組み、自分の中での戦いやすさを追求していく。
各ターンの開始時に、プレイヤーは自分が事前に考えた複数のフォーメーションの中から、このターンで使いたいフォーメーションを選択する。その後、各キャラ毎に取りたいコマンドを選択する流れとなる。
ランダムでステータスが強化される育成要素
本作の育成は、他ゲームでは見ない、非常に独特な作りをしている。
経験値という概念がなく、敵をいくら倒しても、レベルアップしてステータスが向上することはない。攻撃力や防御力、属性耐性は、全て装備品の強さに依存して決まる。
戦闘を介して強化されるのは、HPやSPの上限値と、戦技毎のポジション補正値である。
HPやSPの上限値は、戦闘終了時にランダムで増加する。敵が強いほど、上昇する確率が高まる。
キャラが使う戦技には、それぞれに「GUARD」「ATTACK」「SUPPORT」というステータスが用意されている。これは該当するフォーメーションに配置されている状態で戦技を使った時に、火力に乗っかる補正値を表している。戦闘中に戦技を使うとランダムでレベルアップする。
戦技を使うと、まれにその戦技から派生した別戦技を習得できることがある。これを「覚醒」といい、新たな戦技を覚える際は、全てこの「覚醒」を経由していく。
いつ覚醒するか、何を習得するのか、はランダム。敵が強いほど、覚醒の発生確率は上がっていく。
「ギルド」による支援と、資質獲得による強化システム
世界には、「諜報ギルド」「鍛冶ギルド」「図書ギルド」「印術ギルド」「戦術ギルド」という5つのギルドが配置されている。それぞれのギルドでは
- 鍛冶ギルド:新武器の開発と購入
- 戦術ギルド:新たなフォーメーションの設定やポジションの開発
など、役割が異なっている。
また、ギルドの周辺にはギルドの支援効果が適用されており、その効果範囲内で戦闘をすると
- 諜報ギルド:ターン開始時に敵全体をスタンさせる
- 図書ギルド:敵の防御力を低下させる
といった支援を受けることができる。
世界のどこかには、ギルドタワーを新設可能なエリアがあるため、ギルドタワーを設置して支援効果を受けられる範囲を広げていける。
物語が進むと、街の人や敵キャラ等のNPCが、主人公達に協力を申し出てくることがある。そのような協力者をギルドに配置することで、ギルドレベルが向上し、開発できる商品の品質が向上したり、ダンジョン進行で有利なポイントが増えるなど、戦闘、探索に役立つ要素が解放されていく。
戦闘終了後、タレントという専用の強化ポイントを入手できる。タレントポイントを消費することで、HPやSPの強化とは別に、「覚醒率」の発生確率の増加や消費SPの減少、特定ポジションにいる場合の狙われやすさ減少など、戦闘に役立つ別能力「資質」を手に入れることができる。
幻の大陸を探索し、遺産を見つける物語
千年前、世界は突如「魔族」に侵攻され、人々は「魔族」との戦争を余儀なくされた。「魔族」は地上に「大結界」を施し、ここから生じた「黒き流れ」という異常な海流により、世界は4つの海域に分断されたうえ、各地では異常な天気が年中続いたことで、人間は次々と戦いに敗れていき、最終的に人々は「魔族」の支配下に置かれた。
それから数百年、世界は魔族を頂点とした新たな階級社会が築かれ、地域ごとに独自の文化が形成される形となる。その中には、魔族に反旗を翻そうと画策するもの、魔族に取り込み、仲良くやっていく選択肢を取るものなど、様々な思惑が工作していた。
年中雨が降り続ける街「スヴァルナ」で、魔族に対抗するレジスタンスの一員として活動する「ガリル」や「アーシュラ」、灼熱地獄が年中続く街「ギアズロック」で研究を続ける博士「ティギー」と、彼女に興味を持った魔族「ビビアン」と執事の「イグニス」、印術ギルドで魔族に付き従う「ジーン」と、彼のパートナーである「レイチェル」…各方面で行われる様々な動きが、最後にはとある目的へと収束する。果たして彼らに待ち受ける冒険とはどのようなものなのか。壮大な冒険の幕が上がる。
◆このゲームの良い点
フォーメーションを駆使した戦いが非常に魅力的!
本作は、基本的には超絶オーソドックスなコマンドRPGである。しかし、フォーメーションにより、同じキャラでも火力や防御力があがったり、追加効果が発生したりするため、状況に応じたフォーメーションへ切り替えることで、強敵を相手にした時の対処のし易さが大きく変わるのは面白かった。
短期決戦で終わらせるなら、全員を「ATTACK」ポジションの前線配置にして高火力で押していくことができるし、安定した戦いがしたいなら、「GUARD」ポジションのキャラを前線に置き、攻撃役や支援役を中列や後列に配置して、被弾と回復は「GUARD」役と「SUPPORT」役に、DPS担当は「ATTACK」役で運用することもできる。
耐えきれないような火力を持つ敵なら、思い切って全員を「GUARD」ポジションの後列に配置し、防御重視の戦いをして凌ぎきる手もある。
どの案を取るも正解で、自分なりな戦い方の創意工夫ができるのは楽しかった。
キャラ1人1人が立っていて魅力的!
本作には、全部で9人のメインキャラが登場する。
- いつも元気でみんなを励ましてくれる「アーシュラ」
- 魔族にも関わらず人間に興味がある変わり者の「ビビアン」
- 1番の年長者で、メンバー全員を束ねる人物「バルバローザ」
など、そのどれもがかなり魅力的で、誰1人として空気なキャラはおらず、そのやり取りを見てるだけでも面白かった。
豊富なサブ要素で探検が楽しい!周回による楽しみ要素もあり!
本作では、メインのストーリー部分以外にも、様々な探索要素が用意されている。その要素1つ1つはそこまでボリュームは無いものの、強力な武器や印術が手に入ったり、ギルドメンバーが仲間に加わったりと、戦闘の役に立つ要素が溢れているのが良かった。どこにどのサブ要素があるのか、はわからないため、世界中を旅できる移動手段を入手した後は、地図を片手に、小さな島まで転々と回って、「何か訪問していないダンジョンは無いかな」と探してしまう程だった。
筆者はサブ要素を約6割程回収し、ゲームクリアするまでにかかった時間は約25時間であった。全部の要素をコンプリートしようとすれば、1周だけで約40時間程は遊べる作品になっていると感じた。
本作に登場するギルドの1つ「図書ギルド」では、これまでに出会った人物や入手した武具、倒した敵などの情報が集められている。これらを全てコンプリートするように世界中を旅するのも楽しみの一つだった。
本作のサブクエストを進めていると、時々選択肢が表示されることがある。その選択内容によって、その後の展開や、後で戻ってきた時に行われる行動が変わるようになっている。敵対してエネミー図鑑埋めをするのか、仲間として雇用してギルドメンバーの一員になってもらうか…この要素は個人的には面白かった。
一度ゲームクリアすると、ステータスや武器などを全て引き継いでやり直す強くてニューゲームか、ステータスや武器は初期化されるが、「タレントポイント」を大幅に獲得して始められるモードか、どちらかを選んで周回プレイできる。前述した図鑑集めをコンプリートするには、サブ要素に出てきた選択肢と別の選択肢を選ぶ必要があるため、「図鑑コンプすることが楽しみの一つ」という人にも、しっかりとやりごたえを持ってプレイできる作品となっていた。
ゲームを快適に進める為の要素が多い!
ボタンひとつで戦闘速度を1倍〜4倍にいつでも変更できるため、戦闘シーンの長時間化に悩まされることはない。個人的には、これがあると無いとではコマンドRPGの楽しみ方が大幅に変わる為、本当にありがたい要素だった。
ムービーシーンはいつでもスキップが可能。見逃した部分があるなら、ムービーを最初から見直すこともできる。ムービーだけでなく、通常の会話シーンも、+ボタンを押せば高速で自動進行してくれるため、もう一度同じ場面を見ないといけなくなったとしてもストレスなくスルーすることができる。
ゲームプレイする中でわからない項目があるなら、どんな場面でもR3ボタンを押せばチュートリアルが出てくる。それを読めば内容が理解可能できる親切設計もありがたい。
これらのユーザフレンドリーな要素が多く詰め込まれ、ストレスなくプレイできる点は非常に良かった。
◆このゲームの悪い点
ボイスが全く無いのはちょっと気になる…
多少グラフィックは粗いものの、ムービーのクオリティは比較的高い。ムービーシーンでキャラの口が動いたり、キャラの動き、セリフ量に合わせて自動で進行し、見応えある作りになっていた。
ただ、そうなると全くボイスが無いのが非常に気になってしまう。昨今のゲームには音声込みであるムービーが当たり前なため、その落差にちょっとがっかりしてしまった。
待機メンバーの育成が中々できない…
本作の育成システム上、戦闘に参加できないメンバーは全く育成ができない仕組みになっているのがちょっと残念だった。
戦闘に参加できるメンバーは最大5人で、それ以上のメンバーが仲間になると、戦闘に参加しない待機組が出てくる。戦闘を通した育成は、戦闘に参加したメンバーにしか行われないため、待機組はどうあがいても成長することはできない。
にも関わらず、要所要所でパーティを分割させて戦うことが求められ、その度に育成できていないメンバーは足手まとい気味になってしまう。
一応、武具の強さがステータスに直結する為、育成してないメンバーでも上質な武具を装備すれば十分に戦えるが、武具の値段も高く、全員に満足いく量を配布することはほぼ不可能だ。
待機組に対しても何か育成できる要素が欲しかった。
詰みがちなステージや、戦闘バランスの悪い場面が目立つ…
基本的にはどのダンジョンも親切に作られているが、時々、詰んでしまうようなステージが用意されているのがキツかった。
大ボスが控えるダンジョンは特に詰みやすい。ステージが異常に広く、ボス到達まで40分程はかかる上、途中に体力回復できるスポットが少ないことが多い。ボス戦に勝てないと判断したなら、回復ポイントまで長い距離を戻る必要があった。
また、一度ダンジョンに入ると、ボスを倒すまでダンジョンから出られないこともある。敵が強い為レベル上げが必要になっても、お金を貯めて武具を入手しようとしても、何もできなくなる場面もある。そうなると、最悪ゲームを最初からやらないといけなくなる可能性もある。
個人的には、雪国で行われる侵入者撃退イベントが1番キツかった。ダンジョンの外には出れず、ダンジョン内での戦闘回数には限りがあり、最後にはとてつもなく強力な大ボスが待っているため、育成が足りてないと絶対に勝てないだろう…。
幸い、セーブデータを複数作成することはできる。セーブは上書き保存ではなく、場面場面でデータを分けた方が安全だと感じた。
◆まとめ
親切設計が多く、多くのコマンドRPG好きなプレイヤーにオススメできる作品である「アライアンスアライブHDリマスター」。
途中、詰みかねない場面が出てくるようなアンバランスさは目立つものの、全体的には楽しんでプレイできる作品であった。セールで1000円切るような値段で発売されることもあるため、買ってみても十分楽しめるはずだ。
では!