今回は、「Assassin's Creed Mirage」をプレイした感想と、このゲームの良い点、悪い点をまとめていこう。
(本記事は2024/1/10時点の情報をもとにしている)
2023/10/5にリリースされた「Assassin's Creed Mirage」。原点回帰を謳い、正面戦闘よりもステルスに力を入れた作品である、という宣伝が各地でされていることで有名だ。
戦闘アクションばかりがメインのオープンワールドゲームは良くプレイしてきた筆者だが、ステルスメインのゲームの経験はそこまで無かったため、気になってプレイ。エンディングまでやり切った上での感想をまとめてみた。
なお、筆者は過去のアサクリシリーズは、「アサシンクリードシンジゲート」を8割くらいやった(未クリア)のが最初で最後である。昨今のシリーズである「アサシンクリードオデッセイ」や「アサシンクリードヴァルハラ」はプレイしていない。その前提で本記事を読んで欲しい。
◆個人的感想
総評
Ubisoftといえば、70点〜80点台の出来のゲームを出すことで有名。本作もその例に漏れず、総合的に見て70点台の完成度の作品と言えた。
「原点回帰」を謳い、対面アクションよりもステルスに重視を置いたゲーム設計は、それはそれで楽しめたものの、取れるアクション数自体が少なく、同じような行動の連発となってしまう点は否めなかった。
書いていると、良かった点よりも悪かった点の方が数が多いが、決して駄作ではない。昨今のゲームと比べるとあまり革新的な要素が無く、淡々としたシンプルなゲームのため、「ここが良いよ!」と主張できるポイントがあまり出てこなかったのが実態だ…
オススメできるか、というと…時間やお金が余ってるならプレイしてもいいのでは?という位な印象だ。
どんな人にオススメ?
- ステルスゲームがやりたい
- 比較的コンパクトで手軽なボリュームのゲームがやりたい
- オープンワールドな舞台を、高低差を気にせずに動き回りたい
- 昔のステルス主体のアサクリがやりたい
という人にはオススメできる。逆に、
- 戦闘アクション主体のゲームがやりたい
- ボリュームの多いゲームがやりたい
- 過去に多くのオープンワールドゲームをやってきてちょっと飽き気味
という人には、あまりおすすめはできないと感じた。
◆このゲームの特徴
9世紀のバグダッドを舞台にしたオープンワールドゲーム
本作のゲームジャンルは「オープンワールドゲーム」に該当する。これは、ダンジョンや街に入るたびにロードを挟んで切り替わるのではなく、シームレスに繋がった広大なフィールドを、プレイヤーの好きなように、縦横無尽に動き回れるジャンルである。
オープンワールドゲームの大きな特徴は、プレイヤーの行きたいところに自由に移動できる点だ。また、メインストーリー以外にも、世界観や登場人物をより深く知ることのできるサイドクエストがあるのも特徴。これらは攻略順序というものはなく、プレイヤーのやりたいように攻略できるのだ。
本作の舞台は、9世紀の「バグダッド」である。様々なサイズの建物が所狭しと乱立している都市部を進んだり、砂だらけの広大な砂漠や、池と森林が共存したオアシス等が並ぶ砂漠地帯を駆け抜けたりと、当時のアラブの街並みを自由に駆け抜けることができる。
プレイヤーはこのバグダッドの国中を、パルクールを用いて高低差をほぼ気にせず、自由自在に移動できる。高くそびえる塔によじ登ることも、乱立した家を飛び越えることも、クッションが置かれた場所目掛けて高所から飛び降りることも可能だ。
バグダッドの各地には、ストーリーを進めるためのメインミッションや、様々なサブ要素がちりばめられている。これらに対して、プレイヤーの好きなように挑み、好きな方法でミッションクリアを目指していくことになる。
強襲、爆破等の様々なステルスキル
タイトルに「アサシン」と名がついている通り、本作ではステルスキルがメインのゲームとなっている。どんな敵も、ステルスキルできれば1発で始末可能だ。
ステルスキルの方法は様々。こちらに気付いてない敵に背後から近付いて攻撃する定番方法を始め、高所から飛び降りキルしたり、草木や藁山に隠れた状態で敵をおびき寄せてキルしたりもできる。
付近に火薬や荷積みコンテナ等のオブジェクトがあるなら、それを使用してキルすることも可能。目的地まで上手く敵を誘導する必要はあるものの、姿をさらす脅威を下げた状態で、複数の敵を始末できる。
ステルスキル向けのアイテムを駆使してキルする方法もある。投げナイフで遠距離から攻撃すれば、複数の敵がいて近付かない状態でも確実に数を減らしていける。万が一敵に見つかったなら、煙幕で敵の視力を奪い、動けなくなっているところを無理やりキルすることまでできる。
ゲームを進めていくと、「暗殺の極意」という力を使用できるようになる。敵をステルスキルして溜まっていく「フォーカスゲージ」1つにつき、敵を連続キルできる能力だ。敵が密集してようが関係なく、指定人数を一気にキルできる強力な能力である。
上空と地上を駆使した情報収集
任務を果たすためには情報収集が不可欠だ。目的の場所や敵配置をしっかり理解してから動かないと、中々任務達成できず、逆に敵に見つかってやられてしまうことにつながる。
キャラが屋外にいる時は、「エンキドゥ」と呼ぶ鳥を呼び出し、上空から目的の場所を探し出すことができる。目的地を見つければ、そのままピンを打つこともできる。また、屋外の敵を、「エンキドゥ」を操作してしばらく眺め続ければ、その敵にもピンを立てることができる。立てたピンは壁越しでも見ることができるため、敵のいる位置の把握に役立つ。
キャラ操作中に十字キー左を押すと、「イーグルヴィジョン」という特殊能力を利用できる。敵がいる位置やキーとなるキャラクターの位置、宝箱の場所等が壁越しでもハイライト表示されるため、潜入ルートやステルスキルのタイミングを見極めたり、目的地を明確化するのに役立つ。
ただし、移動速度が通常時より遅くなる点には注意が必要だ。また、「イーグルヴィジョン」を解除してしばらくすると、ハイライト表示が消える点も気をつけよう。
目的地の情報を手に入れるには、人の会話内容を盗み聞きするのも効果的だ。
シンプルで分かりやすい戦闘アクション
敵に見つかってしまった場合は戦闘状態へ移行する。長剣と短剣を手に、弱攻撃、強攻撃の2つの攻撃手段のみを用いて戦う、非常にシンプルな戦闘システムとなっている。
敵の弱攻撃に対してタイミングよくパリィすれば、敵に大きな隙が生じる。そのまま1発キルに持っていくことが可能だ。
敵によっては、重装甲を身にまとった敵もいる。そういった敵にはパリィ後の1発キルは通用せず、また体力や攻撃力が高いため、パリィ失敗時のリスクも高い。そういった強敵を相手にした場合は、無理やりにでも逃げた方が効果的だったりもする。
戦況を見極め、そのまま戦うか、逃げるかの選択を適切に行うことが重要だ。
武具や道具の強化、スキルツリーでの育成要素
剣や鎧など、プレイヤーが装備できる武具は、それぞれ性能が異なる。攻撃力、防御力等の基礎ステータスの違いだけでなく、ステルスキル時に発生する音を少なくしたり、体力上限値を少なくする代わりに攻撃力を引き上げたりなど、それぞれ固有の能力を持っている。各能力の特徴を把握したうえで、自分が使いやすいものを選ぶことが大切になる。
また、武具の強化用設計図、及び必要素材を集めて仕立て屋や鍛冶屋に向かえば、武具の性能を強化可能だ。攻撃力や防御力が上がるだけでなく、武器ごとの特殊能力の強化もできる。
新たな武具や強化用設計図は、街中のどこかにある装備箱を開けることで入手できる。
投げナイフや煙幕などの道具も、指定素材を持って、支部にいる「ムーサー」達へ話しかければ強化が可能だ。保持弾数や効果時間を伸ばしたり、特殊効果を付与したりなど、ステルスする上で役立つ能力を色々と付与できる。
武具や道具の強化に必要な素材は、街中の宝箱から入手するか、交易商から購入することになる。交易商から購入するにはお金が必要になるが、そのお金は街中から拾うか、歩いてNPCからスリをして手に入れた骨董品を売却することで手に入る。
キャラ自身の能力は、スキルツリーを利用してスキル解放することで強化できる。任務クリア時に入手するスキルポイントを使用し、
- 暗殺の極意関連の能力を伸ばす「ファントム」
- 道具方面の能力を伸ばす「トリックスター」
- 探索能力を伸ばす「プレデター」
の3つの中から、プレイヤーの好きな順でスキルを解放していく。
スキルを獲得していけば、利用できる道具の種類が増えたり、「イーグルヴィジョン」の索敵範囲が増えたりしていくため、ミッション攻略が楽になっていく。
依頼、バグダッドの物語、収集品などのサブ要素
オープンワールドのゲームらしく、本作には様々なサブ要素が搭載されている。
まずは「依頼」。いわゆるサイドクエストだ。拠点で依頼を受注後、目的地に移動し、任務を果たせばクリアとなり、素材や衣装、スキルポイントなどを獲得できる。任務毎に「敵に気付かれるな」や「ダメージを受けるな」などのサブ目標が設定されており、それを達成すると追加報酬が手に入る。
続いて「バグダッドの物語」。各地に悩みを抱えた人物が点在しており、その人物の悩みを解決していく。悩みの内容は様々で、
- 部屋の中の文書を集めてきてほしい
- 特定の衛兵を始末してほしい
- 事件の真相を解明してほしい
などがある。達成することで報酬が獲得できる。
その他、一定数を集めて特定場所に納品することで報酬が手に入る「失われた書」や「デルヴィスの収集品」などの収集要素も存在する。これらを全て集めるように頑張るのも、本作のやり込み要素の1つだ。
野盗がマスターアサシンとなる軌跡を描いたストーリー
本作の主人公「バシム」は、バグダッドで生まれた青年だ。幼い頃に母親を亡くし、バグダッドの路上でスリなどの犯罪に手を染めながら育っていた。
そんな彼は、昔から夢の中で悪魔のような見た目をした「ジンミー」に襲われる幻視を見るようになっており、「ジンミー」の正体がなんなのか、答えを求めていた。
ある日、貴族が住む宮殿から、未知なる道具をくすねてくる依頼を受けた「バシム」は、友人の「ネハル」と共に宮殿に忍び込むが、目的物を見つけると同時に家族にも見つかってしまう。なんとか逃げ出した「バシム」だったが、街中で指名手配されてしまい、いつ見つかってもおかしくない状況に。
そんな危機的な状況にある彼を助けたのは、「アサシン教団」の起源でもある「隠れしもの」のマスターアサシン「ロシャン」だった。「ロシャン」に助けられた「バシム」は、自分を苦しめる「ジンミー」の正体を知るため、また自身がさらに強くなるため、「隠れしもの」に所属する決意を固める。
前作「アサシンクリードヴァルハラ」の主人公でもある「バシム」が、どうやってマスターアサシンの座まで到達したのか、その軌跡を描いたストーリーが始まる。
◆このゲームの良い点
自分が考えた手順でクリアできた時の満足度は高い!
ミッションの侵入対象となる敷地内には、所せましと敵が配置されている。何も考えずに侵入すれば、すぐに敵に見つかり、多勢に無勢で敗北してしまう。
そうならないよう、本作には様々な侵入ルートや侵入方法が用意されている。壁の隙間から入るもよし、パルクールで外壁をよじ登って侵入するもよし、傭兵を雇い、衛兵との戦闘中にこそっと正面入り口から入ることもできる。
周囲の状況から、最も効果的な侵入方法を考え、必要なだけの敵をキルして目的を達成できた時は、「やり切った!」という楽しさが高かった。
操作がシンプルで覚えやすい!
本作で取れるアクション数は、他のアクションゲームと比べると比較的少ない。ステルスキル時はR1ボタンを一回押すだけで良いし、物陰や藁山に隠れた状態で敵をキルすれば、自動で敵の遺体を見えないところまで運んでくれる親切設計だ。更に、戦闘時に使うボタンもR1ボタン、×ボタン、L1ボタン位しかない。
そのためアクションゲームによくある、「多くのボタン配置を理解した上で駆使できないと戦えない」ということが本作にはあまりない印象だった。
また、本作では3段階のゲーム難易度が用意されており、それらはいつでも好きに変更することができる。通常難易度から始めて、難しければ難易度を下げれば、敵の索敵能力も戦闘能力も下がり、かなり戦いやすくなる。
総じて、アクションゲーム初心者でも比較的楽しみやすい設計になっていると感じた。
「事典」で当時の世界観を知ることができる!
本作の収集要素の一つとして、街中に転がる事典情報集めがある。集めた情報は、ゲーム内の「事典」で見ることが可能だ。
「事典」では、9世紀当時のバグダッドにおける生活模様や宗教観、建物の背景等を知ることができる。
ゲームの面白さとは直接は関係しないが、あるとないとでは世界観への入り込み度合いが全然変わってくるため、この要素は地味ながらも良かったと感じた。
◆このゲームの悪い点
シンプル過ぎてアクションの拡張性が少ない…
ステルスキルの手段がいくつもあるものの、結局利用する手段の多くは
- 背後から近寄ってキル
- 投げナイフで遠距離からキル
- 「暗殺の極意」での連続キル
が占めている。上記のアクションはゲーム序盤から使えるため、最初から最後までステルスキルのやり方はほぼ変わらない。ゲームが進む中で革新的な方法が解除できたり、工夫を凝らさないとキルできない場面も無い為、始終同じような手段を繰り返すのみだ。アクション周りはかなりシンプルに作られており、本作特有の革新性は無いように感じられた。
また、戦闘時も、敵の弱攻撃をパリィしてしまえば1発キルができるため、パリィ&1発キル主体で戦えば、複数の雑魚敵に襲われたとしても簡単に殲滅できてしまった。
その為、アクション面では単調さが目立ち、ずーっとプレイしていると「飽き」が来る。他ゲームの間にちょっと進める、というプレイングが一番しっくりくるほどだった。ひたすらに没入できるようなハマり込みができなかった点は残念だ。
終盤に行くにつれ難易度が簡単に…
本作では、どんな敵もステルスキルを使用すれば1発でキルができる。強固な鎧を纏った衛兵も、ボスである幹部も変わらず1発キルだ。また、ゲーム終盤に行くにつれ、プレイヤー側の装備が整い、性能が向上していくため、複数の敵をまとめてキルすることも難しく無くなってくる。
そうなると、終盤に行けば行くほど難易度が簡単になっていくという、普通のゲームとは逆の現象が起こる。配置される敵の数も増えるが、こちらがとれる手段の方が豊富なため、力押しさえしなければ比較的楽にクリアできてしまうのだ。筆者はゲーム後半は最高難易度の「マスターアサシン」でプレイしたが、1回もゲームオーバーになることがなかった。
装備もスキルも貧弱な序盤の方が、油断するとやられてゲームオーバーとなることが多く、緊張感があり楽しかった。強敵相手なら様々なアイテムや環境を駆使しないと1発キルできないようにしたり、敵の配置場所をいやらしくしたり、戦闘の難易度を上げるなどをして、もう少し終盤のバランスをとった方が面白いと感じた。
「指名手配」制度は正直要らなかった…
一般市民がいる前で悪事を働くと、その重さに応じて「指名手配ゲージ」が上がっていく。全部で3段階の手配度合いが存在し、2段階目以上になると、街中を歩くだけで衛兵から追いかけられたり、市民が衛兵をわざわざ呼びつけてきたりと、移動にかなりの制約が付いていく。
この制度は、どこでも、どんな状況でもステルスキルさせないように、ある程度の縛りを付ける目的でゲーム側が設けたのだと思うが、個人的にはこの制度はいらなかった。
ミッションの中には、どう足掻いても一般市民の前で衛兵をキルしないと行けないような場面が出てくる。煙幕をたいて姿を隠してキル、という手もあるが、そのためにわざわざアイテム消費するのも割に合わない。任務クリア後も指名手配情報はずっと残り続けるため、ミッションクリアしたはずなのに衛兵から追いかけられ続けることもよくあった。
一応、指名手配度合いを下げることもできはするが、その為の手順も少々面倒。よって、ただゲームテンポを悪くするだけの要因になってしまっていた。
ストーリーは良く分からない…
本作のストーリーを一通りやってみたが…正直よくわからない終わり方だった。ふわーっとした物語のアウトラインはわかるのだが、
- 主人公が最初に手に入れた謎の機械の正体は何なのか
- バシムの師匠はなぜバシムに真実を隠しているのか
- ジンミーとは結局何だったのか
など、ストーリーの中の重要場面で出てくる内容のいくつかがしっくりこず、「結局、このストーリーは何を描きたかったんだろう…?」という疑問が生まれた。
これは前作「アサシンクリードヴァルハラ」を未プレイなせいなのか、はわからないが…筆者と同じく前作をやっていないなら、同じような感想を抱く可能性が高い為、注意が必要だ。
ボリュームはちょっと少な目…
筆者はある程度の依頼ミッションをクリアし、収集物集めも半分程度完了した状態で最終ミッションをクリアし、21時間程かかった。ハーフプライスに近い値段から見たら妥当なボリューム、とも言えなくはないが、他のゲームではこれより安くてボリュームがあったり、やりごたえがあったりするソフトが数多く出ている出ているため、やはりゲームボリュームは少ないな…と感じてしまう感覚は否めなかった。
◆まとめ
悪くはないのだが、イマイチこのゲームの良さが全面に出しきれておらず、「まあ面白い」くらいの評価に収まってしまう作品であった「Assassin's Creed Mirage」。
淡々とプレイしていくような作品で、初代アサクリファンでもない限り、オススメできるようなものではない。
が、オープンワールドで、上下左右の様々な空間から侵入してキルを取る、本作特有の楽しさもある。気になっている人はやってみてもいいだろう。
では!