今回は、「帰ってきた名探偵ピカチュウ」をプレイした感想と、このゲームの良い点、悪い点をまとめていこう。
(本記事の情報は2023/10/16時点を元にしている)
ポケモン作品のスピンオフとして、ニンテンドー3DSでゲーム化され、実写映画化までされた「名探偵ピカチュウ」の続編となる本作。
筆者は前作のゲームは未プレイだが、実写映画だけは見ている、といった状態で本作をプレイした。
発売日当日に購入し、一通りクリアするまでやったため、どんなゲームなのか、いい点悪い点はどこなのか、まとめていこう。
◆個人的感想
総評
可愛かったり、格好良かったりするポケモン達と共生する世界に入り込める没入感や、綺麗に高くアニメーションを見れる点では良い作品だ。
ただ、「推理作品」という割にあまりにも単純で簡単な謎解きには、流石に拍子抜けした。また、ストーリーも先が見える展開ばかりであり、驚きも少なく、全体的に退屈な印象だった。
難易度的に、対象年齢は小学校低学年辺りを想定した作品だと思われるが、ゲーム中の文章には常用漢字がしっかりと採用されており、振り仮名もふってないため、小学校低学年では文章が読めないのでは?という点にも疑問が出る。
本ゲームのターゲット年齢がよく分からず、クソゲーとは言わないまでも、普通ゲーにすら至らないレベルに収まった。
どんな人にオススメ?
- 可愛い、かっこいいポケモンに包まれたい
- 小さい子供と一緒にやれるゲームが欲しい
という人にはオススメできる。逆に
- 推理はしっかりやりたい
- ボリュームあるゲームがやりたい
- ゲームはストーリーを重視する
という人は、本作は合わないため、オススメしない
◆このゲームの特徴
推理をし、事件解決を目指す謎解き型ゲーム
ポケモン作品と言えば、広い世界を探索し、野生のポケモンを捕まえたり、育てて進化させたり、バトルさせたり、といった育成RPGがメイン。本作はそういったRPGとは一線を画し、戦い要素や育成要素は一切なく、様々な証拠を集めて事件解決を目指す推理系のゲームとなっている。
ゲーム進行は基本的に、各セクションごとに舞台となるエリアが指定され、そのエリア内で必要情報を集め、推理し、事件の真相を解き明かして人々を説得完了する、という動きを繰り返す形となる。
セクション内のエリアはそこまで大きくはなく、マップの端から端まで歩き回っても、広めのマップであっても2分もあればわたり切れるほどだ。
各セクションでは、何かしらの大きな事件が1つ発生する。発生した事件に対して、聞き込みや調査を繰り返し、事件の真相を突き留め、次のセクションへと挑んでいく。
現場検証、ヒアリングを繰り返して証拠を掴み、推理する
推理モノとなる本作では、なんといっても情報収集が不可欠。そのためには、事件現場を調べたり、聞き込みをしたりして、証言や証拠を集めていくことになる。
現場検証では、現場を歩き回り、気になった部分でAボタンを押して情報を集めたり、より細かく状況を観察していって情報を集めたりする。事件解決のヒントになるもの、ならないものが混在している現場で、必要な情報の取捨選択をし、事件解決へと目指していく。
証言や証拠が集まったら、推理をする番となる。まずは、細かく限られた疑問を、集めた証拠や証言を組み合わせて整理していく。
整理が進むとストーリーが進み、また新たな証拠、証言探しへと向かうことになる。これを繰り返し、事件を解決できるだけの状況整理ができた後、事件の真相を説明するターンを迎える。ここで、集めた情報と、これまでの推理結果を人々に説明し、事件の真犯人を明らかにしていく。
もし推理に行き詰まった場合、「ピカチュウヒント」を活用し、いつでもピカチュウにヒントを聞くことができる。それでもどうしても正解が分からない場合は、設定画面で「正解表示」機能をオンにすれば、すぐに答えがわかるようになる。
ポケモンの力を借りるアクション要素やミニゲーム
地道な観察や書き込みだけが本作の調査ではない。ポケモンの力を借り、人間では手に入れることのできない情報を獲得できる。
例えば、ガーディは鼻が効くため、特定の匂いの発生源を追うのに役立つし、レントラーは持ち前の透視能力を使用して、壁の先の状況を見ながら、進むべき道や探している相手を見つけることができる。
また、事件の情報集めとは別に、タイミング良くボタンを押したり、ポケモンや人間に見つからないようにしながら目的地へ移動するといったミニゲームも用意されている。いずれも難易度は高くなく、どんなプレイヤーでもクリア可能だ。
ここでも、ポケモンの力を借りてステージを突破するような場面がある。
様々な人間やポケモンの悩みを解決するサブクエスト要素
各章で訪れる街には、様々な悩みを抱えた人間やポケモンがいる。彼らに話しかけると、サブクエストという形で、クリア必須ではないお願いを受けることができる。
サブクエストの内容は、
- 迷子のポケモンを探してきてほしい
- 悩みを解決できる能力を持ったポケモンを探してきてほしい
といった内容が多い。いずれも難易度は高くなく、街中を探索すればクリアに必要な鍵がわかるようになっている。
サブクエストをクリアすると、クリアした数分、各章の終わりに配布される新聞上で後日談が説明される。
「ライムシティ」を取り巻く新たな事件の解決を目指すストーリー
本作の舞台は、前作同様、人間とポケモンが共生する街である「ライムシティ」。本作の主人公である「ティム・グッドマン」と相方のピカチュウは、ここで学生をしながら探偵業のようなこともやっていた。
「ティム」とピカチュウは、他の人間とポケモンとは違い、お互いが言っていることを理解して会話できる特殊な関係であり、ピカチュウが他のポケモン達と会話を交わしながら事件の情報を集め、その内容を「ティム」に伝え、「ティム」から人間たちを説得することで、警察では立証できないような難事件を解決してきていた。前作の事件である「R事件」でも、この2人の連携によって無事に事件が解決、一躍有名な「探偵コンビ」として名が知れるようになった。
2人は探偵業をやりながら、前作開始時から行方不明となっている「ティム」の父親兼ピカチュウの相方であった探偵「ハリー・グッドマン」の行方を捜すため、行く先々で「ハリー」の居所の聞き込みをしていた。
そんな最中、とある家で宝石盗難事件が発生、「ティム」とピカチュウも現場に向かい、事件解決へと協力する。しかし、この事件をきっかけに、2人は「ライムシティ」に住む人々やポケモン全員に大きな影響を及ぼす陰謀に巻き込まれていくことになる。
果たして2人は、「ライムシティ」を守り切ることができるのか、そして行方不明になっている「ハリー・グッドマン」を見つけることができるのか…新たな事件に、おやじ臭いピカチュウが挑む。
◆このゲームの良い点
ポケモンのグラフィックや鳴き声がアニメ世界のまま!
本作の一番の良さはここ!
本作の舞台となる「ライムシティ」は、人間がポケモンをモンスターボールに捕まえて使役するようなこれまでのポケモンにある様相ではなく、ポケモンと人間が共生した世界を描いている。その為、街の各地に沢山のポケモンがおり、且つ登場するポケモンのどれもが、美麗なアニメ調グラフィックで描かれている。
驚いたのは、ポケモンの鳴き声の描写だ。ポケモン本編では、最新ゲームであるポケモンSVでも、電子音のような鳴き声しか採用されていないが、本作に登場するポケモンの鳴き声は、どれも「ピカピカ!」「ゼニゼニ!」「ダネフシ!」のような、アニメで採用されている生きた鳴き声ばかりが採用されていた。(ゼニガメとフシギダネは本作には登場しないので、これはあくまで例だが笑)
まるでアニメのポケモンの世界の中で冒険できているような感覚で楽しむことができた。
人間同士の会話も、ストーリー全体の約半分はボイス有りのムービーであり、見応えもしっかりあった。
また、本作の主人公であるピカチュウがまた可愛いこと!妙におやじ臭い(実際に中性脂肪に悩まされているのでおっさんなのだが笑)いだが、見た目は可愛いピカチュウのため、このギャップに萌えた。また、十字キー右を押せば、ピカチュウといつでも会話できるため、すぐそばにパートナーがいるような感覚でゲームをプレイできた。
バグが無く、高品質!
筆者がプレイする限り、進行不能バグにあったり、テクスチャバグにあったりといった致命的なバグはおろか、細かなバグすら一切出会わなかった。全体通して非常に高品質なゲームだったと言える。
ポケモンSVの時は最適化不足でかなり不満が残る出来だったが、ここまでゲームの品質を上げられるのは、「流石ポケモン!流石Switch!」と思ったほどだった。
◆このゲームの悪い点
単純過ぎて退屈な推理…
筆者はこれまで推理モノというと「逆転裁判」位しかやったことはないが、あちらに比べると推理の難易度は雲泥の差。それどころか、推理モノでは無くアクション作品である「ゼルダの伝説」の方が、推理(実際には謎解き)が難しく、やりごたえがあった。
謎解きパートでは、毎回必ず複数の選択肢が提示される。更に、選択肢の中身も、普通にストーリーを見ていれば、推理すらする必要ないレベルの内容を問うてくるため、間違えることはまずない。謎解きの8割はこの「答えの分かりきった選択肢から答えを選ぶ」という作業の為、これだけでも推理ゲームとしての体を成していない。
推理に必要な情報集めも超単純だ。人に話を聞く場面では、聞くべき人とそうでない人とが、吹き出しの色で明確に分かるし、謎解きのキーになりそうなコメントは勝手に強調表示&メモ取りしてくれるため、最早会話を聞かずとも、後でメモを読み返すだけで謎が解けてしまう。現場検証では、必要情報を集め切ったら「もう調べることは無い」と教えてくれるため、情報の取り逃がしが発生することはあり得ない。
仮に間違えてもペナルティは一切ない。もう一度同じ選択肢からやり直すのみで、ゲーム全体に緊張感も一切ない。
というか、そもそも物語全体を通して「事件」が殆ど起こらない。
- ここから先に進むにはどうしたら良いか
- あの人は今どういう状況にあるのか
- この施設では何が行われているか
など、もはや事件でも何でもない事項ばかりが締めている。もう少し事件を色々発生させ、その事件の犯人特定を繰り返していく中で、物語の裏に潜む真犯人に繋がる、というような展開にしてほしかった。
明らかに、小学校低学年以下をターゲットとしているレベルの謎解きがずっと続くため、大人がプレイしようものなら、ただ退屈な「作業」になってしまうはずだ。
振り仮名が無く、子供には難しい言葉もちらほら…
小学校低学年以下を対象としたような単純な推理要素しか無いのだが、漢字に振り仮名が無いため、音声が無いテキストベースのやり取りは、低学年には逆に何が書いてあるか読めないのでは?と感じてしまう。
更に、CEO、CTOなどのビジネス用語も当たり前のように出てくるため、明らかに低学年のユーザには理解ができない。
謎解きの短絡さと相反する文言の難しさが、妙にちぐはぐで気になった。
サブクエストをクリアする意義が皆無…
道中で悩みを抱えている人やポケモンに話しかけ、サブクエストを受注し、クリアしたところで、何かお役立ちアイテムが貰えたり、レベルアップできたりするわけでは無く、ただステージ終わりで毎回見ることの出来る新聞に、サブクエストクリア後の後日談が載るだけだ。
せめてサブクエストの内容が面白いなら許せるが、迷子の子供やポケモンを探してくるだけだったり、悩みを解決できるポケモンを見つけてくるだけだったりと、ただのお使い要素のみのため、やっていても面白く無い。
せめて、クリアすると一緒に謎解きイベントの協力をしてくれる仲間ポケモンが手に入るなり、裏エンディングに行けたりはして欲しい。そのいずれも無く、ただ退屈なだけのサブクエスト要素は、正直不要な要素だった。
あまりにも展開の読めるストーリー…
謎解きだけで無く、ストーリー展開も非常にチープ。街全体を取り巻く事件の真犯人は誰なのか、この後どういう展開が待っているのか、そのどれもが、少しゲームを遊ぶだけで簡単に先読みできてしまう。
その為、ただ向き先のわかっているストーリーを、単純で作業のような推理を繰り返して追っていくのみで、続きが気になる要素は全然なかった。
正直、ゲームをプレイするより、実写映画の「名探偵ピカチュウ」を見た方が、2時間で起承転結までスッキリと収まる作りになっているため、そっちの方が楽しかった、とも思えるほどだ。
唯一良かったのは、
- 名探偵ピカチュウ本人に隠された真相がわかる
- 前作をやってなくても大まかなストーリーや登場人物の関係がわかる
くらいか… それが本作のストーリーの評価をひっくり返せる程か、というと、そんなことは一切ないが…
ボリュームは非常に少ない…
筆者は、前半はサブクエストを全てクリア、後半は1/3だけクリアして他はメインストーリークリア直行、というプレイングをしたが、それでゲームクリアまでかかった時間は約7時間弱だった。7000円未満という価格の割に、ボリュームがあまりに少なすぎる…
サブクエストを全てクリアしようと頑張ったら、10時間弱位は遊べるのかもしれないが…前述の通り、サブクエストがあまりにも退屈&クリアする意義がほぼ無いため、やりたいという気持ちになる人の方が稀なのではないか…しかも、サブクエストを全部やり切っても10時間位、というのもあまりにもボリュームが少ない気がするが…
サブクエストを全てクリアした!特定のシーンを全て見た!というような実績要素も無いため、収集癖のある人の要望も満たしてない。このゲームにボリュームを求めるのはお門違いと言えた。
◆まとめ
人気のポケモンシリーズのスピンオフ作品だが、大人を中心としたユーザにとってはあまりにもお粗末な出来になっているとしか思えない作品である「帰ってきた名探偵ピカチュウ」。
最早同梱されているポケモンカードに価値が全振りしているといっても過言ではないが、ポケモンのいる世界で生活するような環境に惹かれているのであれば、買ってみてもいいだろう。
ただ、ポケモンカードがいらないのであれば、中古店で買うことを強くお勧めする。
では!