今回は、PS5版の「Thymesia」をプレイした感想と、このゲームの良い点、悪い点をまとめていこう。
(本記事は2023/12/30時点の情報をもとにしている)
2022/8/18に発売された、インディーズの高難易度アクションゲームである本作。様々なアクションゲームをやってきた筆者は、「インディーズながらも非常に出来の良い作品」という噂を聞いており、いつかはやってみたい!と思っていた。
そんな中、ついに本作を購入してプレイ!すべてのエンディング到達まで達成した上で、本作の特徴や良い点、悪い点をまとめていきたいと思う。
◆個人的感想
総評
スタミナという概念が無い、パリィで敵の攻撃を弾きながらのプレイングが主体、全体的に暗い雰囲気の中でステージを進行していく、といった様は、正にSEKIRO×ブラボをイメージして作ったんだろうな、という印象。
序盤の難易度はかなり難しく、高難易度ゲームをいくつかクリアした筆者でも「これはキツイ…」と感じたが、ゲームに慣れ、キャラの育成が進むにつれ、連続してパリィできる気持ちよさと、素早い連撃で敵をズバズバ!と切りつけていける爽快さがクセになり、「楽しい!!」と思えるようになった。
ゲームボリュームがかなり少ない、敵があまり変わり映えしない、ビルド構築要素が大してない、という、ボリュームの薄さは残念だったが、比較的安価で気持ちよい体験ができるゲームではあるため、高難易度ゲームが好きなプレイヤーであれば、手に取ってみて損はない。本作の特徴を分かった上で、購入をオススメする。
…高難易度ゲーム、という特性上、誰にでもオススメできる作品ではないため、そこは注意してほしい。
どんな人にオススメ?
- アクションゲームが好き、かつ得意。
- パリィ主体の比較的素早い動きのゲームが好き
- サクッとやれるゲームが欲しい
- ストーリー分岐する作品が好き
という人にはオススメできる。逆に、
- アクションは苦手で、高難易度ゲームはやったことない
- ボリュームのあるゲームがやりたい
- パリィがあまり得意ではない
という人にはおすすめはできない。
◆このゲームの特徴
連撃 &高難易度を組み合わせたアクションゲーム
本作は、「ダークソウル」や「仁王」などといった、いわゆるソウルライクと呼ばれるオフライン専用高難易度アクションゲームである。雑魚敵ですら攻撃を1発食らうだけで大きく体力を削られるほどの難易度の高さゆえ、何度もゲームオーバーになっては、どうすれば敵を倒せるのか考え、試し、段々と倒せるようになっていく、という、アクションゲームに対するプレイヤー自身の腕前や忍耐力がかなり問われるジャンルである。
これまで数多く作られてきた高難易度ゲームだが、その実、作品毎に細かな違いがある。
本作の大きな特徴は、パリィ(敵の攻撃をはじいていなすこと)がメインの戦闘スタイルが求められること、及び他の高難易度ゲームには当たり前に存在している「スタミナ」が存在しない点だ。
敵の攻撃がぶつかるタイミングでパリィボタンを押すことで、敵の攻撃をはじき、敵に反射ダメージを与えることができる。連続パリィが全て決まれば、敵の攻撃をいなしながら、反射ダメージで相手に傷を負わせるプレイングができる。
また、スタミナが存在しないため、攻撃、回避、パリィを好きなだけ連続で出すことが可能。攻撃→パリィ→攻撃→回避…という動作を出し続けながら、出てくる敵を倒していく。
ゲーム進行は、拠点となるエリアから、自分が向かいたいダンジョンやミッションを選ぶことで、探索が開始する形式をとっている。フィールドには雑魚敵と中ボス、大ボスが待ち構えており、大ボスを倒せばステージクリアとなる。
体勢ゲージと体力ゲージという2つのゲージが存在
本作では、敵の体力には「体勢ゲージ」と「体力ゲージ」という2つのゲージが存在している。これは雑魚敵、ボスの全員に共通するシステムだ。なお、プレイヤー側は体力ゲージしか存在しない。
体勢ゲージを削るだけでは、しばらくすると体勢ゲージが回復していってしまい、結果的に与えたダメージ総量が少なくなってしまう。体勢ゲージを削り、体力ゲージがもろ出しになった上で、更に体力ゲージも削っていくことで初めて、敵の体力を完全に減らすことができるシステムになっている。
4つの攻撃を使い分けて攻撃する戦闘スタイル
本作でプレイヤーが取れる攻撃手段として、
- 通常攻撃
- 爪攻撃
- 羽攻撃
- 疫術
という4つが存在している。
通常攻撃では、敵の体勢ゲージを削ることができる。若干ではあるが体力ゲージを削ることも可能だ。出の早い連続攻撃であり、隙も少なく、扱いやすい。まずはこの攻撃で敵の体勢ゲージを削り、ダメージの起点を作ることとなる。
剥き出しになった体力ゲージを削るには、爪攻撃という技を使う。出が遅いがリーチの長い攻撃であり、敵の体力ゲージを削ってダメージを与える。また、溜めて放つことで、後述する「疫術」を敵から吸収することもできる。
「疫術」は、他ゲームで言ういわゆる「特技」。種類は様々で、手斧や大剣、ナイフなどの武器モーションに合わせた攻撃を振るう。敵の体勢ゲージを削るもの、体力ゲージを削るもの、敵を吹き飛ばすもの、遠距離から攻撃できるものなど、非常にバリエーションに富んでいる。
「疫術」は、溜めた爪攻撃を敵に命中させることで、その敵が使用する武器に合わせた力を奪い、1回のみ使用できるようになる。また、敵を倒すとランダムで手に入る専用素材を使用し、力を解放することで、任意の「疫術」を一つ装備でき、プレイヤーの気力ゲージが尽きるまで、何度でも使うことができるようになる。
羽攻撃は、遠距離から敵の体勢ゲージを削ることが可能な技だ。与えるダメージ量は少ないものの、敵を怯ませる効果や、パリィができない強烈な攻撃である「クリティカル攻撃」を中断させる効果を持っている。
レベルアップ、技能、薬品強化等のビルド型成長システム
道中に現れる敵を倒すと「記憶の断片」と呼ばれるポイントを一定数入手する。チェックポイントである中間ポイントで「レベルアップ」を選択することで、手に入れた「記憶の断片」を一定数消費し、プレイヤー自身のステータスを向上させることができる。
レベルアップ時は、
- 筋力:通常攻撃の火力を上げる
- 生命力:HPゲージの最大値を増やす
- 術力:爪攻撃の火力を上げる。および気力の最大値を上げる
の3つのステータスの中から、自分で上げたいステータスを自由に選ぶことができる。
レベルアップすると、「技能点」と呼ばれるポイントを入手する。その「技能点」を消費し、攻撃モーションの拡張や、攻撃時の火力、攻撃で発生する追加効果の付与等を行うことができる。
獲得できる「技能点」は全部で25ポイントあるが、習得可能な「技能」数はそれの倍近くにも及ぶ。どの技能をどこまで獲得するか、その割り振り方で、戦闘スタイルが変わってくる。
プレイヤーの体力が削られた場合、回復薬を使用して体力回復が可能となる。回復薬には
- 平均的な量の体力を回復させてくれる「通常薬」
- 時間をかけながら徐々に体力を回復していく「持続薬」
- 回復量は少ないながらも、即時回復が可能な「即効薬」
という3種類がある。プレイヤーの好みに合わせ、好きな回復薬を持ち込むことができる。
また、各回復薬には、マップを探索する中で手に入れた材料を組み合わせることで、攻撃力や防御力の増加といった、回復薬使用時に体力回復だけでない追加効果を発生させることができる。
なお、他のソウルライク作品にはよくある装備品の付け替え要素は、本作には存在しない。使用武器も防具も、全て固定されている。
疫病と錬金術をテーマにしたストーリー
本作の舞台は、多くの人々を苦しめる謎の疫病が蔓延した世界である。唯一、錬金術の研究が進んでいる「ヘルメス王国」のみ、錬金術を活用した治療法により、疫病の封じ込めに成功していた。
しかしある時、とある村で、錬金術に隠された恐ろしい代償によって引き起こされたとされる不可思議な事件が発生する。その事件をきっかけに、世界で唯一の生き残り国家である「ヘルメス王国」すら壊滅してしまう。
そんな中、主人公である「コルヴス」は、疫病の治療薬を作るための鍵となる知見を持っているものの、なんと記憶喪失となってしまう。この世界を救う最後の希望として、「コルヴス」は自身の記憶を集め、この世界を疫病から救うための治療薬を作るように奮闘する。
果たして「コルヴス」は、この地獄のような世界を救うことができるのか…
なお本作は、プレイヤーの取る行動次第でストーリーの結末が変わるマルチエンディングを採用している。
◆このゲームの良い点
ゲームが進むと味わえる、テンポよく気持ち良い戦闘!
ゲーム序盤は取れるアクションも限られ、かつ敵の体力も多いことから、かなり難しい印象だった。最初に訪れるエリアのボス「オーダ」は、初戦ボスとは思えない程に強く、「Bloodborne」のガスコイン神父を思い出すほど。筆者も何度もゲームオーバーになった…
そこを乗り越え、取れるアクションの幅が増えてくると、途端に戦闘が気持ち良くなってくる。敵の攻撃パターンが段々と頭に入ってきて、パリィのタイミングが掴みやすくなり、攻撃と回避とパリィのタイミングをコロコロと切り替えていくことに慣れ始まる。ここまでくれば、戦闘難易度は高いながらも、テンポよい華麗な戦闘を楽しめるようになってくる。
慣れてくれば、複数人を同時に相手取り、一人を攻撃中に他の敵の攻撃をパリィで弾き、そのまま強烈な疫術で複数の敵を一気に攻撃する、というような、他のソウルライク作品ではあまり見られない爽快な戦いができるようにもなる点は、やっていて非常に気持ちよかった。
また、プレイヤー側の攻撃途中にパリィや回避を入れ込む、といった芸当がスムーズにできるのも気持ちよい。こちらの攻撃途中で敵の反撃が飛んできた場合も、即座にパリィしてまた連撃を繰り出せるため、言葉通り「とめどない連撃」が出しやすく、これまた爽快感が抜群であった。
ただ、どれだけ操作に慣れてきたとしても、ゲーム自体高難易度である点は変わらない。特に中ボスやボスは、様々な攻撃パターンを持ち、初見では全てをミスなくこなしていくのはほぼ不可能だ。しかし、何度もやられ、敵の攻撃パターンを理解していけば、次第に敵の全攻撃をはじいて反撃できるようになってくる。インディーズゲームながらも、非常に高品質でやりごたえのある戦闘体験を与えてくれた。
「技能」による操作性変更の拡張性がすごい!
ビルド要素の1つである「技能」による拡張性が、他の高難易度ゲームでは見られないほど多岐にわたっていた点は感動した。
本作は基本的にパリィ主体のゲームであるが、中にはパリィが苦手な人もいるだろう。そういった人向けに、なんと本作では「技能」の設定次第でガードができるように操作変更できてしまう。ガード性能自体は高くは無いが、パリィに向けてタイミングを合わせる必要が少なくなるため、パリィが苦手な人でも遊べるようになっている。
「パリィ自体はできるけど、タイミングがシビアなのは苦手」という人は、「技能」でパリィ受付時間を伸ばすことまでできる。パリィ時に敵に与えるダメージ量が下がってしまうが、「パリィタイミングが合わない」というストレスから解放されやすくなるため、より快適にパリィを楽しむことができる。
パリィが得意な人は、余った「技能点」を攻撃系に割り振ることで、更にアクションの強化が可能となる。攻撃時の気力ゲージの回復量を増加させたり、羽攻撃できる回数を飛躍的に増加させたりと、より「攻撃面」を快適に進めることができるため、パリィと組み合わせ、とめどない連撃を繰り出すことが可能となる。
プレイングを大きく変更できる「技能」は、他の高難易度ゲームにも入れてほしいと思えるほど、実に良いシステムだったと感じた。
◆このゲームの悪い点
敵数、ステージ数、ステージサイズと、全体ボリュームが少なめ…
筆者は、初めは探索等を特にせずストレートに進め、なんと約5時間でエンディングに到達できてしまった。その後、用意されている全エンディング、及び全サブクエストの達成までやったが、それでもクリアにかかった時間は約12時間とかなり短かった。用意されているステージ数自体が、他の高難易度ゲームの半分以下しかなく、且つ1つのステージの大きさも小さいため、1周が非常に早く終わってしまうのが原因だった。
また、登場する敵のバリエーションも少なく、常に代わり映えしない敵を相手にしているような感覚にもなってしまうのも残念ポイントだ。
インディーズ作品だし、作り込みの難しい3Dアクションゲームだし、値段もハーフプライスだし、という点を見れば、このボリューム感は妥当な気もするが、ゲーム内容自体が面白かったために、あまりにすぐ終わってしまったのはちょっと肩透かしで残念だった。
ゲーム序盤の難易度が高過ぎる…
数ある高難易度ゲームの中でも、序盤の難しさは過去に類を見ないほどに高いと感じた。
1番の要因は、敵の体力とこちらの攻撃力が噛み合ってない点だ。ゲームの始めたてはこちらの攻撃力が低く、敵の体勢ゲージを削るだけでもそれなりな回数の攻撃しないといけない。その後に隙の多い爪攻撃をしないと回復されてしまうが、その爪攻撃も複数回当てないと十分に体力ゲージを削れない。
その為、序盤は雑魚敵相手でも比較的長い戦闘時間を強いられる。そんな状態で複数人を同時に相手しようものなら、片方の敵の体勢ゲージを削ってる間に他の敵から攻撃され、その敵の対処をしてるうちに、せっかく体勢ゲージを削った敵が回復してしまう、といったことが頻発する。
人によっては、この難易度の高さに嫌気がさし、そのまま辞めてしまうのではないか、と心配になってしまうほどだ。
プレイヤーのレベルを上げ、「技能」をいじって様々な強化を施していけばかなり戦いやすくなり、このゲームの面白さを物凄く感じることができる。ただ、その時は既にゲームの中盤を過ぎており、残るはエンディングまで一直線、という状態になってしまう。
もう少し、序盤、中盤、終盤それぞれでの敵の強さのバランスをとってほしかった、とは非常に感じた。
ストーリーテリングは不親切…
本作では、ゲーム序盤のみ、世界観に関しての説明がなされる。そこを過ぎると、細かなストーリー説明が殆ど発生しなくなるため、一体どう言う話で、なんでそうなったのか、ただプレイするだけの受け身では理解ができない。筆者はゲームクリアした後、「結局この物語は何を伝えたなかったんだろう…」といった感覚になってしまった。
マップの各所に、ストーリーに関するドキュメントが落ちており、これを集めることで、いったいこの国に何が起きたことで悲惨な事態になったのか、背景を段々と理解できるようになる。が、このドキュメントはマップの様々なところに隠される形で数多く配置されており、全部を集めようと頑張って初めて全容がわかるため、相当頑張らないとストーリー性が理解しにくい。
ソウルライク作品は大体ストーリーがよくわからない作品が多いが、本作はその中でも特筆してわからない印象。筆者的にはストーリーは非常に残念だった。
◆まとめ
とめどない連続攻撃やパリィを繰り出して戦うことができる、高難易度ながらも非常に爽快なゲームとなっていた「Thymesia」。
最初の難易度が非常に高いものの、そこを乗り越えれば非常に面白くなってくる。今後は弱点であるボリューム面をもっと拡張させ、新たなソウルライク系シリーズとして継続して発売してくれることを期待したい。
では!