今回は、PS5版の「AFTER IMAGE」をプレイした感想と、このゲームの良い点、悪い点をまとめていこう。
(本記事は2023/12/22時点の情報をもとにしている)
PS5版が2023年4月27日に発売された本作。PS5版以外にも、Switch版が2023年4月27日、 PS4版が2023年4月27日、PC版が2023年4月25日に発売されている。
これまでメトロイドヴァニラと呼ばれるジャンルのゲームはあまり触れてこなかった筆者だが、非常に評価が高いのに、そこまで値段が高くない、ということで、どんな作品なのか気になり、購入してみた。
一通りやり込み要素を触ってみたため、本作の特徴や、良い点、気になった点などをまとめていく。購入の参考になるとありがたい。
◆個人的感想
総評
メトロイドヴァニラ×ソウルライク、と言った作品。メトロイドヴァニラ系の「同じステージでも繰り返し探索していく楽しさ」と、ソウルライク系の「何回もやられながらも繰り返しボスに挑み、攻略方法を見つけていく」という部分が絶妙に絡み合い、やりごたえのある作品だった。
ただ、探索、および戦闘の難易度には、「不親切設計」と思えるような部分が散りばめられており、「快適なプレイができるのか」というと首を縦には振れない。「そんなの分かるわけない」「理不尽だろ」と言いたくなる要素もチラチラあったことは事実だ。
今から20年位前に発売されたゲームをやっているような不親切感があるため、人を選ぶ。筆者は不満点がありながらもなんだかんだ楽しめたが、全員にオススメできるものではないため、本作の特徴を十分に理解してから購入してほしい。
どんな人にオススメ?
- アクションゲームが好き、かつ得意
- マップ探索していくことに楽しみを覚える
- 文書を読み込んで理解していくタイプのストーリーが好き
- ボリュームのあるゲームがやりたい
という人にはオススメできる。逆に、
- アクションは苦手
- 高難易度ゲームはやったことない
- 分かりやすい、濃厚なストーリーがほしい
- 目的が分かりやすいゲームがやりたい
という人にはおすすめはできない。
◆このゲームの特徴
探索型の2Dアクションゲーム
本作は、「メトロイドヴァニア」と呼ばれるゲームジャンルに該当する、2D探索型のオフライン専用アクションRPGである。
マップはいくつかのエリアに分けられており、それらが地続きで繋がる構造をしている。マップの各所には、普通のジャンプでは決して届かない場所や、今できるアクションでは破壊できない床等が点在しており、一度訪れただけでは、エリア全域を探索できない。そういった部分は、別のエリアで新たなアクションを手に入れてから戻ってくることで行けるようになる、という仕組みをとっている。この「一度訪れたマップに、新アクションを持ってから再度訪れ、新たな探索エリアが増える」という部分こそが、「メトロイドヴァニラ」と呼ばれるゲームの大きな特徴だ。
マップには、プレイヤーを攻撃する敵を始め、数多くのトラップも仕掛けられている。トラップの中には、別エリアで手に入れた新アクションを使用すれば、逆に足場として利用できる場面もある。
敵やトラップをかいくぐり、進んでいった先には、様々なタイプのボスが待ち構えている。このボスを倒すことで、新アクションを入手したり、新アイテムを入手したり、ゲーム進行のキーアイテムを入手したりできる。
新アクションを入手することで探索範囲が拡張
マップを探索したり、ボスを倒したりすると、「アフターイメージ」というアイテムを入手することがある。「アフターイメージ」を入手することで、スライディングや二段ジャンプ、水中移動など、ゲーム開始時はできなかったアクションの種類がどんどん増えていく。これにより、探索の範囲がどんどんと広がっていく。
新たに行けるようになったエリアでは、宝箱が置かれていたり、新たなボスが待ち構えていたり、ゲームを進めるためのキーアイテムが入手できたりする。
また、「アフターイメージ」の中には、プレイヤーのアクションに付加価値を付けたり、プレイヤーの基礎ステータスを変更するものもある。そういった特殊な「アフターイメージ」は、プレイヤー側で任意に付け替えることができる。
ボスやステージの特徴、自身のプレイングなどを加味して、どの「アフターイメージ」を装備した方が攻略しやすいのか考え、装備を選んでいく。
多数の装備、魔法、装備をビルド
プレイヤーは、最大2つのメイン武器、1つのサブ武器(魔法)、3つの防具、3つのアクセサリを身に着け、強化していくことができる。
各種装備品は、フィールドにいる商店で購入したり、マップ内の宝箱から入手したり、ボスを倒して入手したりすることが可能。攻撃力、防御力が上がる、というもの以外にも、HP上限が増加したり、特定の属性攻撃が付いたり等、武器ごとに異なる様々な追加効果を持っている。
メイン武器の種類は、剣、大剣、太刀、双剣、鎌、鞭の全部で6種類。各武器とも、攻撃モーションやリーチ、火力、使用できる攻撃スキルが異なってくる。敵や自分のプレイスタイルに合わせ、戦いやすい武器を選んで行くこととなる。
敵を倒すたびに経験値を入手できる。経験値が一定量溜まるとレベルアップし、体力上限の上昇に加え、「アフターイメージポイント」というポイントを入手できる。
この「アフターイメージポイント」は、「天賦」と呼ばれる、所謂スキルツリーに使用する。「天賦」では
- HPやメイン武器火力等の基礎ステータスを上げるもの
- 武器種毎で使える追加アクションを入手できる者
のいずれかが点在している。自分が入手したいものから順にスキルを獲得し、更に高難易度なステージへと出ていくことになる。
出会う人々から受領するサブストーリー
世界の各地には、様々な目的を持ったキャラが存在している。彼らと会話するとサブストーリーが発生する。
依頼内容は、特定のエリアに訪問するだけで良かったり、敵を倒すことで入手できるアイテムを納品したり、世界のどこかに存在する建造物を破壊してきたり、実にバリエーションに富んでいる。
依頼を達成すれば、アイテムや装備品が手に入ったり、後述するマルチエンディングの一つに繋がったりと、非常に重要な要素へと繋がっている。
記憶を失った少女「ライネ」の記憶を巡るマルチエンディングストーリー
本作の舞台は、神により創られた「庭園」と呼ばれる場所。そこは森林や大きな湖、活動する火山など、様々な自然環境を持つ、正に「楽園」だった。人間、および秩序の守り人である巨人族も、この「庭園」の中で非常に繁栄した生活を送っていた。
しかし、とある時に人間は巨人に対して戦争を仕掛ける。「庭園」全体を覆い尽くす大戦へと発展した結果、人間は巨人が神から授かったものをすべて奪い取り、禁断の儀式により「魂の海への門」を開いた。
しかし、その時突然の爆発により、門から大量の水が流れ込み、中央都市であった「王都」は冠水。完全に廃墟と化してしまった。この大災害を起因に戦争は終結、人間サイドは多くの犠牲者を出し、生き残った人々は荒廃した世界で何とか生きていくしかなくなってしまった。
それから数年後、この厄災により記憶を失った少女「ライネ」は、ある日自身の村が魔物によって襲われ、自身の親代わり的な人物であった「あロス」がやられ、かつ彼女の魂を黒ローブの少女が持ち去る現場を目的する。「アロス」を救い出すため、そして彼女自身の失われた記憶を取り戻すため、自身と常に一緒にいる聖霊「イフ」と共に旅へ出る。
果たして彼女は、「アロス」を救い出し、自身の記憶を取り戻すことができるのか?
なお、本作はマルチエンディング形式をとっており、ゲーム内でどこまで探索、収集してきたか、その後の行動として何を行ったか、によってエンディングが変わっていく。
◆このゲームの良い点
探索の楽しさは一級品!
メトロイドヴァニラの一番の楽しい部分、といえるのが、探索であろう。一度訪れただけでは探索できない場面ばかりでも、新たなアクションを引っ提げてまた訪れることで先に進めるようになり、これまでは出会えなかった新たなボスや、新たなアイテムが手に入った時の喜びは、「来てよかった~」という感覚をプレイヤーに与えてくれた。
マップ自体が広く、実施できるようになるアクションのレパートリーも多いため、上記の喜びが、ゲーム開始時からずっと続いていく。つい各エリアを隅々まで探索してみたくなってしまい、メインのゲーム進行が中々進まなかったほどだ(笑)
新たな場所に進めるようになるためには、新アクションが手に入れ、それを使いこなせればいいだけ。謎解き要素といった余計な要素はほぼ無く、新アクションさえ手に入れば、実に色々なところを歩き回ることができるシンプルさも良かった。
やりごたえのある戦闘難易度!
本作に登場する敵の火力はどれも非常に高い。雑魚敵ですら、1発食らうだけでもかなりダメージを受ける。ボスに至っては、装備品やスキルでちゃんと強化していかない限り、半分近いダメージを受けてしまうことも。そんな火力をもったまま、怒涛の連続攻撃を繰り出してくることも多く、避けるのも手一杯になりやすい。
しかし、どんなボスにも攻撃後の隙が必ず存在しており、その隙を狙って攻撃していけば、必ず倒せる作りになっている。何回もやられ、やり直していくことで、少しずつでも敵の攻略方法を見つけていく、正に「ソウルライク」作品と同じような毛色をしており、やりごたえがあった。
ゲーム開始時に現れるボス達はそこまで強くはなく、段々と強くなっていく導線の作り込みもできている。どうにもクリアできなければ、マップを探索して新たな装備を手に入れたり、レベルを上げてステータスを上げたりすれば、クリアできる可能性が上がっていくため、どうしてもだめならレベル上げ、という手もある。
アクションゲームに不慣れな人だと、ボスが倒せずに嫌気が指してしまうかもしれないが、筆者のような高難易度ゲームが好きなプレイヤーに取っては、非常にやりごたえのある作品であり、クリアした時の達成感が尋常ではなかった。
ゲームボリュームは超ボリューム!
本作のゲームボリュームは尋常ではないほど多い。とてもハーフプライス以下の作品とは思えない。
まず、マップそもそもが異常なまでに広い。マップはいくつかのエリアで区切られており、各エリアが連結して1つの巨大マップを構築するような形となっている。結構な数のエリアを歩きまわり、「もうこのエリアは探索しきったかな」と思っても、そこから更に別のエリアに繋がっていく、ということが頻繁にあり、マップの異様な大きさに圧倒された。
マルチエンディングである本作で全エンディングを見ようものなら、世界を隅々まで探索し、必要アイテムを集めに集めまくる必要があるため、必然的にとんでもないボリュームとなる。その分、戦うことになるボスの数も多く、必然的にゲームプレイ時間が伸びてくる。
更には、ゲームクリア後には「New Game+」という外伝的な物語が用意されるうえ、ストーリーとは関係なく、ひたすらにボスラッシュを楽しむだけの戦闘用モード「霊魂の試練」というモードも遊べるようになる。「霊魂の試練」では、メインストーリーの主人公である「ライネ」以外にも、本作に登場したサブキャラの何人かを操作できるため、また新たな気持ちでゲームプレイできる点も非常に魅力的だった。
登場する敵の数、装備の数も非常に豊富で、敵の情報をまとめた図鑑や、これまで集めた装備品を列挙した保管庫といった要素もある。これらの情報を埋めていくことも、やり込み要素として存在している。これをクリアすることで手に入るPSトロフィーも用意されていた。
筆者は全エンディングを迎え、マップ探索を平均8割~9割ほど実施し、サブクエや装備品収集などは6~7割ほど行った上で、ゲームプレイ時間は約40時間であった。PS5版で4200円という低価格帯で考えれば、ここまで遊び尽くせるのは間違いなく値段以上のボリュームだった。
豪華声優陣によるフルボイス!
フルプライスのゲームであっても、完全フルボイスのゲーム、というのはかなり珍しい部類に入る。本作はインディーゲームにも関わらず、フルボイスが採用されていた。
担当声優も、「進撃の巨人」のミカサなどを演じている石川由依氏や、「ポケモン」のピカチュウや「one-piece」のチョッパーなどを演じている大谷育江氏がメインキャラを演じており、その他の声優陣も新人ではなく声優としての経験値を多く積んでいる方々が採用されている。
豪華声優陣達による語りだけで、物語に引き込まれてくる感覚があり、実によかった。ボイス周りだけで、本作の予算を多くを使っているのではないか?と少し心配になるほどだ(笑)
◆このゲームの悪い点
探索、戦闘とも若干理不尽さがある…
良かった点に上げた「超ボリュームの探索」と「やりごたえのある戦闘」に矛盾するような内容だが、いくつか「それは理不尽だろ…」と思える部分があったのも事実。丁寧なゲーム誘導や、ある程度の戦いやすさをゲームに求める人であれば、本作は最悪『酷いゲーム』という印象を受けてしまいかねない。まるで20年前に発売されたような、ユーザフレンドリー性の低いゲームだった。
探索面では、目的地がどこなのか、が非常にわかりにくい。次に行くべき目的地がどこなのか、マップ上に明記してくれない。自分が受けたクエスト内容の確認はできるが、起きたイベントが時系列順に並んでいるだけで、「次にどこに行けばいいのか」が書いてあることはほとんどない。
一応、時々ではあるが、目的地の場所を提示してくれることはある。が、非常に数少ないので、結局は自分で目的地を探していく必要があるのは若干辛いところはあった。
また、クエスト進行に必要なキーアイテムの入手が求められることもあるが、それがどこで手に入るのか、も教えてくれないため、自分でひたすらマップを歩き回り、必要なアイテムを入手していくしかない。キーアイテムを手に入れたとしても、そのアイテムはどこで使うものなのか、も書かれないため、「このアイテム、手に入れたんだけどどこで使うんだろう…」となることが頻繁にある。
マップ自体が非常に広く、移動するのだけでも結構な時間が要求される作りなのだから、もう少しヒントとなるような情報をちりばめてほしいところだった。
また、自分がいる場所の上下左右に道が存在しているのか、画面を見るだけでは分かりにくい、というのも気になった。マップ上は道があるように書かれているが、その場に行っても道がなく、だいぶ困惑する場面が見られた。「メトロイドヴァニラの作品と言えばそういうもの」と言われてしまっては元も子もないが、個人的にはもう少しわかりやすい目印のようなものを示してほしかった。
戦闘面では、回避と防御、というアクションゲームには必須級のコマンドが無いのがきつかった。「ダッシュ」という横方向への即時移動が初めから使えるのだが、ダッシュ自体には回避能力はないため、敵の攻撃が当たるタイミングでダッシュしても敵の攻撃は当たってしまう。とあるアフターイメージを入手すれば、ダッシュに回避効果が付与されるため、だいぶ戦いやすくなるが、入手できるのはなんと最終盤…敵によっては、この場面で攻撃をされたら避けようがない、ということが何度もあったため、その時はさすがにイライラした。
こちらのメイン攻撃は近接攻撃のため、敵に近付かなければダメージを与えられない。しかし、敵に近付いた際の防衛策である防御や回避が無い、というかなりシビアなプレイングが求められるため、ゲーム終盤に行けば行くほど、高難易度を通り越して理不尽と感じる機会が増えた。その分、倒せた時の達成感はすさまじいのだが…
一部のコマンドが使いにくすぎる…
育成を進めていくと、方向キーや他ボタンと攻撃ボタンを同時に押すことで、特殊な攻撃ができるようになる。その中の一部の攻撃コマンドである「スティック下(上)+スティック横+攻撃ボタン」は、発動動作が非常に使いにくく、「せっかく強い技なのにそもそも出せない」ということが頻発した。どうやってスティック方向を別方向へ素早く適切に倒せるんだよ…
また、ゲームを進めていくと、空中でスティックを下方向に倒すことで、一気に落下するアクションが使用できるようになる。これは逆に発動条件が緩すぎて、ただ横方向へジャンプしたいだけなのに急降下し、そのまま誤爆ダメージを受ける、という機会がかなり多かった。
他のボタンにコマンド割り当てを変更したい、と思っても、スティック方向による操作を別ボタンに割り当てるオプションは無い為、どうしても自分でスティック捌きを頑張るしか解がない。
触ってないボタンがいくつか余ってるし、わざわざスティック操作という間違えやすい方法でコマンド入力させなくてもいいのだが…ここはかなり残念だった。
ストーリーはドキュメントをちゃんと読みこまないと難しい…
本作のストーリーは、ただ漫然とプレイするだけでは、イマイチはっきりとしたことが分からないで終わってしまう。物語のメインである「アロスの救出」と「ライネの記憶の探求」がどうなったのか、がわかるのだが、
- そもそもこの世界は何なのか
- ラスボスは一体何だったのか
- 「巨人」と「人間」の争いの際にはどういったことが行われていたのか
など、プレイする中で出てくるいくつかの疑問に対しては、ストレートな答えを用意してくれない。
一応、ゲームをプレイしていると各地にドキュメントが落ちており、そこでは上記の疑問をある程度解消してくれるような内容がいくつか書かれている。ただ、ドキュメントの場所はマップの様々な場所に点在しており、後でまとめて読み返す、といったこともできないため、一度読んだ際にちゃんと内容を理解しておかないと、結果的に物語の全容を理解しきれないままとなってしまう。
「ゲーム内に登場する読み物を読んでいき、考察していくのが好き」というプレイヤーであれば、ゲームの世界をしっかり理解していけるため、ハマるかもだが、筆者はストーリー上で大体の内容の説明をちゃんとしてほしいタイプのプレイヤーなため、ストーリー進行には不満が残った。
◆まとめ
多少不親切で理不尽な要素が搭載されてはいるものの、超ボリューム、超やり込みで、インデーズゲームとは思えないほどやり込んで楽しむことができた作品である「AFTER IMAGE」。
マイナーな作品のため、見たこともない、というプレイヤーも多いだろうが、値段もそこまで高くはないため、アクションに自信がある、というプレイヤーは、是非ともプレイしてみてほしい。
では!