今回は、PS5版「Eternal Strands」をプレイした感想と、このゲームの良い点、悪い点をまとめていこう。
(本記事の情報は2025/2/14時点である)
2025/1/29にリリースされた「Eternal Strands」。「Yellow Brick Games」スタジオが初めて作成した作品だ。ゲーム紹介に、剣や魔法、クラフトという面白そうなワードが並んでいて、リリース後評価が高いのを見て、気になって購入。ストーリークリアまでやり込んでみたため、本作がどういうゲームなのか、良い点、悪い点はどこなのか、まとめていきたい。
個人的感想
総評
ゲーム性は凄く面白い。様々な有名ゲームの核とである面白い要素を上手く融合させ、「既知感があるのに見たことない」という新たなゲームへと昇華させている。このゲーム性を狙って作ったのであれば、開発陣のゲームに対する着眼点と、考えた企画内容を実現する開発力は素晴らしい。
が、それ以外の要素が全体的にあと一歩足りない…という部分が目立つ。予算不足なのか開発期間不足なのかわからないが、せっかくの素晴らしい方向性が非常に勿体ない。
面白いは面白いのだが、「このゲーム凄い!」と感じるのは前半までで、しばらくすると段々「うーん…」という感覚になる。定価よりも少し値段が下がるか、DLCが出てから購入するかした方がよいと感じた。
どんな人にオススメ?
- 自由度の高いゲームをプレイしたい
- マップを探索するのが好き
という人にはオススメできる。逆に
- 色々や武器や魔法を使えるゲームがやりたい
- 様々な敵と対戦したい
- ボリュームが多いゲームがやりたい
という人にはあまりオススメできない。
このゲームの特徴
立体探索×魔法×クラフトを組み合わせたアクションゲーム
本作は、高低差のあるマップの探索、魔法を駆使した戦闘、集めた素材を使用した武具のクラフト、という要素を組み合わせた、オフライン専用のアクションゲームである。
マップはそこまで広くは無いが、上下の作り込みが大きくなされており、崖下から崖上まで、隅々まで探索していくつくりになっている。また、建物の内部や隠れた洞窟も存在している。すべての木々や壁等は、スタミナが続く限り登ることができる。
マップの種類は草木や生い茂る森林から、市街地、研究所等、多岐にわたるマップが中規模サイズの箱庭が複数用意されており、拠点となる「南壁中継地」から、挑みたいマップを自分で選んで出撃する。
同じマップでも、昼に行くか、夜に行くかで、登場する敵に違いが生じる。また、天候の要素もあり、天候によっては行く難易度の高い場所が行きやすくなったり、逆に行動範囲が狭められたりする。
ゲーム進行には、拠点でメインクエストを受注し、クエスト達成に必要な条件を満たしていく形をとっている。クエストは、指定のアイテムを持ち帰るものが一番多いが、中には指定の場所へアイテムを設置するものや、特定のボスを討伐すること等の別種類も存在する。これらのクエスト目標を達成し、完了報告をすることで、ストーリーが先へと進んでいく。
剣と魔法を駆使した戦闘システム
マップの各地には、大小さまざまな敵がうろついており、プレイヤーを見つけ次第襲い掛かってくる。彼らとは、剣を使うか、弓を使うか、魔法を使うかして戦うことになる。
剣は、ガードができ、振りの速い片手剣と、攻撃モーションは隙だらけだが、広範囲を攻撃でき、火力も高い両手剣の2つがある。メインの攻撃手段は、連続攻撃できる弱攻撃と、溜める事で強力な攻撃ができる強攻撃の2つだ。それ以外に、武器ごとの固有技として、片手剣ならガード、両手剣なら出の早い柄攻撃ができる。また、武器によっては特殊効果を持ったものも存在し、その特殊技を使用して攻撃もできる。
弓は、近距離攻撃の体術と、遠距離から弓矢で撃ち抜く遠距離攻撃を使い分ける。またこちらも、特殊効果がついた弓矢をクラフトすることで、特殊技を利用できる。
魔力を利用した魔法攻撃も、頻繁に使う攻撃手段の1つ。炎、氷、キネティック(重力)の3種類の魔法の中から、使いたい魔法を選んで使用する。魔法の使用には魔力が必要で、魔法を使わずにいれば自然回復する。
魔法は単体使用だけでなく、複数を組み合わせて使用することも可能。例えば、一定範囲の物体を引き込む小さなブラックホールを敵に張り付けた後に、周囲に炎をばらまく魔法を発動すると、ばらまかれた炎が全てブラックホールに飲み込まれて敵を焼き切る、といったことができる。
魔法を使うと、周囲の環境にもその影響を与えてしまい、プレイヤーも魔法効果に応じたダメージやバフがかかる。そういう時は、相反する魔法を周囲に放つことで無効化が可能だ。
剣、弓矢、魔法の切り替えは全て1画面の中で臨機応変に対応可能。切り替え中は敵やプレイヤーの動きが超スローモーションになるため、安心して切り替えが可能だ。
素材を使用した装備品クラフト&糸を使用した魔法習得
フィールドに散在している木々や岩、宝箱等の破壊可能オブジェクトを攻撃して破壊すると、様々な素材を入手できる。フィールド上にいる敵を倒すことでしか入手できない素材も存在する。また、マップのどこかには武具の設計図が落ちている。これらの素材や設計図を集めることで、武具のクラフトが可能となる。
ただ、クラフト時に使用する素材は、ある程度自分で決めることができる。入手難易度の高いレアパーツを利用すると、攻撃力や防御力等の基礎数値や、スタミナに影響する武具の重さを軽減できる。また、炎に強い素材、氷に強い素材が存在し、これらの素材の組み合わせ方によって、炎や氷属性ダメージに対する耐久力を極端に上げた装備を作ることもできる。
一度作った武具も、「再鍛造」という手法を用いて、別の素材を付け替えて性能アップを図ることもできる。
武具作成に使用した素材を追加消費することで、武具のアップグレードを図ることが可能。アップグレードすれば攻撃力や防御力、属性耐性等全体的な性能がどんどん上がっていくため、より敵を倒しやすくなっていく。
入手した素材は、装備品の作成以外にも、拠点の拡張させるための材料にも変換できる。素材のレア度に応じて、変換時の材料数が多く入手できる。材料を一定数集めると、拠点にある「鍛冶屋」や「書庫」等の設備をレベルアップでき、マップから持ち替える素材の数が増えたり、所持できる回復薬の総数が増えたりと、冒険が更にこなしやすくなる。
魔法を入手するには、大型ボスから「糸」を入手する必要がある。
災厄により混乱した世界を冒険する織師達の物語
本作の舞台となる世界「メイダ」は、「織師」と呼ばれる魔法使いが駆使する魔法によって、各国が大きな発展を遂げていた。しかし、半世紀前に突如発生した「サージ」により、世界各地で災害が発生、世界各国は物資や領土の奪い合う戦争を始めてしまい、多数の犠牲者が出ることとなった。それを受け、織師を多く抱えた魔法発展の中心地である「アンクレイヴ」は、魔法の壁を展開して、周囲の各国から孤立する。この一大トラブルの原因は織師による魔法だと判断した人々は、戦争が落ち着いた後も織師を厄介者としてつまはじきにするようになってしまった。
主人公である「ブリン」は、「サージ」後の世界を生きる織師の一人。複数の学者や鍛冶職人等でパーティを組んでいる「オリアの織師団」の一員として、「アンクレイヴ」のそばにある安全地帯で斥候として働きながら、「アングレイヴ」内に突入する方法を模索していた。
ある時、森の中で「ブリン」は、「アンクレイヴ」にいた織師たちによって開発された人型機械「アーク」を見つける。それと同時に、周囲には触れるだけで体が傷ついてしまう瘴気が溢れはじめ、「ブリン」達はピンチに陥る。その時、突如として「アーク」が起動し、周囲に瘴気を防ぐバリアを展開して、どこかへ向かって移動し始める。「アーク」についていった「ブリン」達は、瘴気を抜けた先に、「アンクレイヴ」の住民たちが移動に利用していた「織機門」が設置された安全地帯を見つける。
臨時キャンプをしき、周囲の探索を始める「ブリン」。果たして「サージ」以降、「アンクレイヴ」の街はどうなってしまったのか、そして急遽起動した「アーク」は一体何だったのか、探索を続ける中で、「ブリン」はこの世界を救うためのカギを担っていく…
このゲームの良い点
自由度の高さの作り込みがすごい!
本作のゲームシステムを一つ一つ見ていくと、多くの面で、他ゲームに存在する要素が取り込まれていることに気付く。壁や大型ボスの体を自由に登れるのは「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」を、敵や環境から素材を手に入れて装備品を作るのは「モンスターハンター」シリーズをインプットにしたと思われる。魔法アクションは、少し前に発売された「フォースポークン」あたりに影響を受けたのだろう。これらの要素を丁寧に組み合わせることで、立体探索×魔法×クラフトという、これまでに経験したことのない、新しいゲームへと昇華している。
戦闘面では、例えばボスを1体討伐する、という面においても、様々な戦い方が可能だ。ボスの体に張り付いて、体中のパーツを破壊して動きを抑制しながら戦っていくも良し、魔法を駆使して少しずつダメージを与えていくもよし、遠距離から弓や重力魔法、環境オブジェクトを使用して倒すもよしだ。「こう倒さないとだめだ」という制限がないため、効率的な戦い方を模索する楽しさがあった。
探索面では、制限なく登りと魔法を駆使して、 立体的に作られたフィールドの行きたいところへ思い思いに移動できる。破壊できる扉や家もあるので、それらを破壊していくと、中に隠された宝箱を見つけることができたりと、探索し甲斐が生まれている。
装備品のクラフトも、素材の組み合わせによって性能差を変えられる要素は、目的ごとに違う武器を作る楽しさがあった。
ありとあらゆる面で、これでもかという程自由度を押し出した作品は見たことが無く、新鮮に楽しむことができて良かった。
海外アニメ調のグラフィックが綺麗!
海外のゲームのため、キャラデザインには少しクセがあるものの、アニメ調作品としてのクオリティはしっかり担保していた。
ムービーでは、アニメパートとCGパートが交互に訪れるようになっている。アニメパートは、キャラ同士の表情がプレイヤーに伝わるし、迫力のある戦闘を描いてくれているし、アニメとして遜色ない作品となっていた。
3Dムービーは、激しいシーンはそこまで作られてないものの、キャラの動きはしっかり作らていて、見応えのあるシーンが作られている。フィールドデザインも、木々や山、建物、研究室等に作り込みに手を抜いているような部分は見当たらない。また、安価なゲームによくある、3Dムービーパートと操作パートでキャラグラフィックが異なる、という事態もなく、ムービーのまま、ゲームに突入でき、グラフィックは非常に良いと感じた。
このゲームの悪い点
色んな面でボリュームが少なめ…
使える魔法の数、用意されている武器種、敵の種類、そもそものゲームボリューム等、色々な面でボリューム不足が目立った印象だった。
魔法戦闘を売りにしている本作だが、用意されている魔法の数は多くない。かつ、戦闘で使える魔法の数はその中の半分程で、ほとんど同じ魔法しか使ってなかった印象。魔法の属性も、氷、炎、キネティック(重力)のみで、他にも雷とか土とか風とか、よくある魔法属性の魔法も用意してくれればよかったが、それらが無いのが残念だ。
武器種も、片手剣と両手剣と弓矢の3つのみ。槍や斧、杖等の、他RPGで見られる武器種はない。ただこちらは、特殊攻撃の存在により、同じ片手剣でも異なる使い方ができるため、魔法よりもバリエーションがある、と言えばあるが…ならばやはりもう少し魔法のバリエーションが欲しいところだ。
敵の種類も少ない。多くの敵が
- オオカミ
- カメ
- 炎の蚊
- 人型の機会兵
しかなく、どのマップでも、見たことある敵が襲ってくるため、新鮮味がない。ボスも、半数が似たような巨神兵で、特定イベントを除き、倒し方が一緒だ。「またこのオオカミたちや衛兵、巨神兵と戦うの…?」と何度思ったかわからない。それでいて、中盤以降に登場する雑魚敵は体力が非常に高く、数多くの攻撃をしないと倒れてくれない程テンポが悪い。このバランス感はもっと何とかしてほしかった。
更に、ストーリークリアまでのボリュームもそこまで多くない。筆者は、難易度ノーマルでサブクエストも約7割ほどクリアした上でラスボスを倒し、クリアまでにかかった時間は約18時間であった。クエストの数は多いが、どれもがマップの特定ポイントでアイテムを集める、と繰り返す事が多く、目的物がある場所も、クエスト目的地まで誘導してくれる機能で簡単にわかるので、その場に行くだけで簡単にクリアできてしまう。誘導機能を使わなければもう少しクリア時間がかかるが、それはもはや縛りプレイの領域だ。一応、マップの各地に点在しているドキュメントや装備レシピを全て回収しようとすると、自分でマップの隅から隅まで歩き回る必要が出るため、必然的にプレイ時間は増すが、それを「ボリュームがある」と表現するのはまた違う印象…
唯一ボリューミーな部分はマップの数。各マップのサイズから考えれば、値段以上の種類を用意してくれている印象だ。ここまで作りこめていた開発陣なのだから、敵の種類や戦い方のバリエーションをもっと増やせたと思うが、開発の予算が限られていたのかな…
サブクエに旨味がほぼ無い…
サブクエも沢山の量が用意されており、かつそのどれもがクリアまで比較的ボリューミーな依頼をこなす必要があり、やりごたえがある。それは良いのだが、頑張ってサブクエをクリアしても報酬という報酬が無い。たまーに、新たな装備品のレシピが入手できたりすることがあるだけだ。報酬を目的にするよりも、キャラ同士の会話を楽しんで、世界観の理解を促進することが目的となっているのかと思われるが、そういうのはメインストーリーでやって欲しいものだ。
せっかく頑張ったのに報酬ゼロとは…サブクエを頑張る意味が皆無で悲しかった…
専門用語多過ぎ…解説用のドキュメントの量が多過ぎ…
ゲームが始まって早々、かなりの数の専門用語に圧倒される。「サージ」「織師」「アンクレイヴ」といったメインワードを始め、本ゲームの舞台に登場する人種の名前や、師団員のキャラ名もドバーっと一気に出てくる。流石にここまで一気に専門用語が出ると、理解するのに骨が折れ、しばらく物語が理解できなかった。
また、世界感や登場人物、過去に起きた事件などの多くをドキュメント化し、自分で能動的に読んで理解していくシステムがかなりたるい。文書はちゃんと日本語訳されてはいるが、少し理解しにくい内容が書かれたドキュメントが大量に並ぶため、読むのに疲れてしまう。
海外産ゲームあるあるの膨大なドキュメントは、もう「海外産ゲームなのだからしょうがない」と割り切るしかない要素な気もしているが…
キャラ同士の会話でも、物語をちゃんと理解するには、会話中に出てくる選択肢を全て読んでいく必要がある。これも海外ゲームあるあるだ。なぜ海外はこういう作り方をするゲームが多いのだろう…個人的に、このような作りはあまり好きではないので、残念な要素として感じてしまった。
アクション中に英語字幕を読んでる暇がない…
本作は日本語音声が無い。全て日本語字幕が画面下部に表示される。日本語訳自体はしっかりされているが、流石に戦闘中に行われる会話は読みようがない。次々に襲ってくる敵を裁く間に、画面下部に出てくる文章を読んでいる暇などない。
ただまあ…ここに文句を呈するのもちょっと違うような気もする…ここはもう、自分が英語をちゃんとできるように勉強しよう、としか言えないかもしれない…
まとめ
ゲーム性は非常に面白いが、開発予算なのかスケジュールなのか、何かが足りずにあと一歩及ばなかった印象の作品であった「Eternal Strands」。方向性は絶対に悪くなかったので、開発元はこのまま諦めず、次作でもっと作り込んだ作品を出してほしいところだ。
定価で本作を買うなら、開発元を応援する意味合いで買う形になるだろう。「ちょっと興味がある」くらいであれば、もう少し値段が下がったタイミングに買ったほうが良いだろう。
では!